GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
まさか、ひょっとしてと思いながら、美奈子は訊ねた。
「琴のママにもそう言った?」
「言ったわ」
けろりとした口調で姉は答える。
「琴子ちゃんと話をした男子生徒がいてもいなくても、それを見てなくても見ていたとしても、そんな些細なことをうちの美奈子はいちいち覚えてはいないと思いますって」
そうしたらあの人ムッとしたみたいでとんがった声になって、それでも無理やり平静を装って、声を掛けたのは他校の、それも高校生だったみたいだから、美奈子ちゃんがもし見かけてたらわかるはずだから、とにかくあなたじゃらちがあかないから、明日の晩にでもまた電話しますとか言って。
ガシャン。大きな音を立てて電話は切れた。
「桜井のおばさんも充分大人げないと思うんだけどね」
人の悪い笑みを浮かべて言う真由子に、美奈子は抗議する。
「勘弁してよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのせいで琴のママにわたしが睨まれたら、肩身の狭い思いをするのは琴なんだから」
「あら、部屋を抜け出して琴子ちゃんのところに行ってたことごまかしてあげたのに、その言いぐさ?」
「それは……助かったけど……」
「それで、ついでといっちゃなんだけど、桜井のおばさんが何にいきり立っているのか教えてくれる? 明日またあの人から電話があったらどうでもわたしが出て、きのうの件を美奈子に聞いたらこう言ってましたからって直接美奈子には取り次がずに説明だけしてさっさと電話を切る予定だから」
「あのねー、お姉ちゃん」
「言っておくけど、あの人以外にはそんな失礼な真似したこともなければ、これからする予定もないから」
「失礼だとわかってて、する?」
「ええ」
眉をひそめる美奈子に、真由子はにっこりと笑い返す。
「どのみち相手はそういう礼儀とかわかんない人間なんだから。それより協力してちょうだい、美奈子。明日、なんて言って答えたらいいと思う? 心当たりがなかったみたいだったって言ってもいいんだけど、心当たりはあるんでしょ? ひょっとして、さっき男の子からかかってきた電話と関係あるの?」
「ん……」
美奈子は少々迷いながら、勉強机の椅子に腰を下ろす。
「関係なくもないんだけど……昼間、わたしは口が固いよって言ったばかりだしなあ」
「わたしも口は固いわよ」
「でも、そうやって、噂って広がっていくものだと思わない?」
「琴のママにもそう言った?」
「言ったわ」
けろりとした口調で姉は答える。
「琴子ちゃんと話をした男子生徒がいてもいなくても、それを見てなくても見ていたとしても、そんな些細なことをうちの美奈子はいちいち覚えてはいないと思いますって」
そうしたらあの人ムッとしたみたいでとんがった声になって、それでも無理やり平静を装って、声を掛けたのは他校の、それも高校生だったみたいだから、美奈子ちゃんがもし見かけてたらわかるはずだから、とにかくあなたじゃらちがあかないから、明日の晩にでもまた電話しますとか言って。
ガシャン。大きな音を立てて電話は切れた。
「桜井のおばさんも充分大人げないと思うんだけどね」
人の悪い笑みを浮かべて言う真由子に、美奈子は抗議する。
「勘弁してよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのせいで琴のママにわたしが睨まれたら、肩身の狭い思いをするのは琴なんだから」
「あら、部屋を抜け出して琴子ちゃんのところに行ってたことごまかしてあげたのに、その言いぐさ?」
「それは……助かったけど……」
「それで、ついでといっちゃなんだけど、桜井のおばさんが何にいきり立っているのか教えてくれる? 明日またあの人から電話があったらどうでもわたしが出て、きのうの件を美奈子に聞いたらこう言ってましたからって直接美奈子には取り次がずに説明だけしてさっさと電話を切る予定だから」
「あのねー、お姉ちゃん」
「言っておくけど、あの人以外にはそんな失礼な真似したこともなければ、これからする予定もないから」
「失礼だとわかってて、する?」
「ええ」
眉をひそめる美奈子に、真由子はにっこりと笑い返す。
「どのみち相手はそういう礼儀とかわかんない人間なんだから。それより協力してちょうだい、美奈子。明日、なんて言って答えたらいいと思う? 心当たりがなかったみたいだったって言ってもいいんだけど、心当たりはあるんでしょ? ひょっとして、さっき男の子からかかってきた電話と関係あるの?」
「ん……」
美奈子は少々迷いながら、勉強机の椅子に腰を下ろす。
「関係なくもないんだけど……昼間、わたしは口が固いよって言ったばかりだしなあ」
「わたしも口は固いわよ」
「でも、そうやって、噂って広がっていくものだと思わない?」