GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
ふうん、そう。そうなの。なるほどね。そんな子とつきあってたら、どうせそんなことになるんじゃないかとママは思ってたわ。だからおよしなさいってあれほど言ったのに。でも、それだって本当は相手があなたかどうかわかったもんじゃないのよ。お家の人にわからないように、友達のところに泊まる計画を立ててたんでしょ。その子はこういう状況に慣れてるってことなのよ。大体、わけも聞かずにそんなに簡単に外泊を許すなんて、親御さんもいいかげんだと思うわ。きちんとしたおうちじゃないってことよ。
泣き出した少女の肩を抱いて、友達は家の玄関に座らせる。彼女は小さな声で少女にささやく。先に中、入ってなよ。こんなおばさんの話なんて聞くことないから。
それまで呆然とことの経過を眺めているしかなかった真由子のクラスメートは、そこでやっと我に返ったのだという。
おばさん、そりゃ、あんまり一方的な言いぐさじゃない? こういうことって男の方も悪いんだよ。第一桜井ちゃんが、自分に責任があるって認めてんだよ。あんたが往生際悪いこと言っても仕方ねえだろ。
ちょっと一言口をはさんだだけで、百語ぐらいの罵詈雑言になって戻ってきた。
知明にも責任があるですって? 知明はだまされているのに? いいかげんにしてほしいわ。それに、どうしてその子の肩を持つのかしら? あなたもその子にだまされてるんじゃないの? そもそもしっかりしたお嬢さんなら、どんな誘惑があっても自分ではねのけるだけの芯を持っているはずよ。
そして、攻撃の矛先は、その友人にも向かう。こんな態度の悪い柄の悪い生徒が同じS高に通っているなんて信じられないとか、友達を選ばないと知明もこんなに柄が悪くなったら困るだとか、大人に隠れての隠蔽工作に一役かってるなんてどうかと思うとか。
「全くよく口が回るもんだと、最後にはぽかんとして聞いてたんだけどな」
電話の向こうで彼は、最後にそう括った。
「とにかくすげーおっかねー、うぜーおばはんだよな、桜井のおふくろってのは」
「写真を持ってたってのが、すごいね」
「探偵を雇って撮らせたらしいや」
「ほんとにエンコーだったの?」
「いや、違う。少なくとも彼女は違うって言ってた。以前つきあってた相手らしいんだけどさ、んなこと当事者でもないのに聞けないし」
「桜井くんはなんて?」