GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
琴子は目を丸くした。
「美奈と?」
「そう。わたしの家はパパもママも全くの庶民だから私立の医大は多分無理だけど、公立だったらそんなにお金がかからないって言うから、多分大丈夫だと思うんだ」
美奈子と琴子がたまたま同級生であったばかりでなく、美奈子の姉と琴子の兄も同学年で、2人とも今年から大学に通い始めている。美奈子の姉は市内の国立大学に。琴子の兄は都心の有名私立大学に。
「そりゃ……美奈と一緒なら嬉しい……けど」
不安げに琴子は俯いた。
「国立の医学部ってすごくランクが高いって聞いたの。うんと田舎とかなら別だけど、通学できる範囲には、あたしが受かりそうなところはないからってママが……」
「お医者さんになるんだったら、どのみち国家試験ってのがあるでしょ? だったら最初から頑張っておいた方がよくない?」
「そうだけど……美奈、本気? ツアコンになるとか言ってなかった?」
「ん、いいじゃないよ、そんなの適当だもん」
なんとなく格好いいから。そんな理由で夢を口にしていた美奈子よりも、保育士さんになりたいと言っていた琴子の夢の方がずっと真剣で、ずっと重みがあったように思う。美奈子の方こそ、それをあきらめるのかと問いたい。
「一緒に勉強しよ」
そうしたらきっと楽しい。それだけでなく。きっと琴子を守ってあげられる。
「わたし、外科医を目指すからさ。これでも手先が器用な方だし、料理も裁縫も得意。一人前になったら、琴が雇って」
笑って言うと、琴子は顔をしかめた。
「美奈、その発想グロいよ」