GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
隣りに腰をおろして琴子の方を向いた美奈に、ううん、と琴子は首を振ってみせた。
「あたしもほんとは迷ってたの。梅宮さんのこと、ほんとは言った方がいいんじゃないかって。隠しても、例えば梅宮さんの方でパパに話したことが、パパからママに伝わっちゃうこともあるかもしれないし、また梅宮さんから電話かかってくるかもしれないし」
「わたしもそう思ったのよ。うんとあとになってわかったら、あのときどうして言わなかったのってことになって、琴とママとの間がこじれちゃうと思う。それにね」
黙って頷く琴子に、美奈子は続けて言った。
「琴のお兄さんが高校の頃のことだけど、琴のママ、お兄さんを毎日学校に送り迎えしていた時期があったでしょ? 高校2年の秋頃から、3年の1学期のあたりごろまでだったと思うのだけれど。もし、琴のママが今度のことで、琴を送り迎えするって言い出したら、そして本当にそうしたら、ママが梅宮さんとばったり学校で顔を合わせる可能性だってあるわけでしょ。だったら早いうちから、ほんとはできれば琴の口から言ったほうがいいと思ったのだけど……」
「うん、あのね……」
琴子は小さく頷いて、
「それはもう、ママに言われてたの。美奈子ちゃんが一緒にいてくれたら安心と思っていたけど、そうもいかないようだから、これからはママが学校に送り迎えしていくわ、って」
「それは困るな。琴と一緒の時間が少なくなっちゃう」
「うん。だから美奈がママに話してくれて助かったかも。なんだかんだいって、ママ、美奈のこと信用してるから」
琴子は伺うように美奈子を見た。
「それで、ママ、なにか言ってた?」
「そういうことなら、琴が梅宮さんのところに行ってないか当たってみるって。ただ、梅宮さんのことは全く想像もしてなかったみたいで、びっくりした様子だったけど」
「そっか」
琴子は小さく溜息をついた。
「帰らなきゃ、ね。帰ってママに謝らなきゃ」
「謝るって、何を?」
「ん。嘘ついてたことを」
梅宮紀行の問題は家庭全体の隠し事で、別に琴子だけが嘘をついていたわけではない。けれども琴子の後ろめたさと心地の悪さを知っていた美奈子は、黙って頷いた。
「あたしもほんとは迷ってたの。梅宮さんのこと、ほんとは言った方がいいんじゃないかって。隠しても、例えば梅宮さんの方でパパに話したことが、パパからママに伝わっちゃうこともあるかもしれないし、また梅宮さんから電話かかってくるかもしれないし」
「わたしもそう思ったのよ。うんとあとになってわかったら、あのときどうして言わなかったのってことになって、琴とママとの間がこじれちゃうと思う。それにね」
黙って頷く琴子に、美奈子は続けて言った。
「琴のお兄さんが高校の頃のことだけど、琴のママ、お兄さんを毎日学校に送り迎えしていた時期があったでしょ? 高校2年の秋頃から、3年の1学期のあたりごろまでだったと思うのだけれど。もし、琴のママが今度のことで、琴を送り迎えするって言い出したら、そして本当にそうしたら、ママが梅宮さんとばったり学校で顔を合わせる可能性だってあるわけでしょ。だったら早いうちから、ほんとはできれば琴の口から言ったほうがいいと思ったのだけど……」
「うん、あのね……」
琴子は小さく頷いて、
「それはもう、ママに言われてたの。美奈子ちゃんが一緒にいてくれたら安心と思っていたけど、そうもいかないようだから、これからはママが学校に送り迎えしていくわ、って」
「それは困るな。琴と一緒の時間が少なくなっちゃう」
「うん。だから美奈がママに話してくれて助かったかも。なんだかんだいって、ママ、美奈のこと信用してるから」
琴子は伺うように美奈子を見た。
「それで、ママ、なにか言ってた?」
「そういうことなら、琴が梅宮さんのところに行ってないか当たってみるって。ただ、梅宮さんのことは全く想像もしてなかったみたいで、びっくりした様子だったけど」
「そっか」
琴子は小さく溜息をついた。
「帰らなきゃ、ね。帰ってママに謝らなきゃ」
「謝るって、何を?」
「ん。嘘ついてたことを」
梅宮紀行の問題は家庭全体の隠し事で、別に琴子だけが嘘をついていたわけではない。けれども琴子の後ろめたさと心地の悪さを知っていた美奈子は、黙って頷いた。