GOING UNDER(ゴーイングアンダー)
「あの子は要するに、おばさんに喜んでもらいたくて頑張ってるんだろ。琴子ちゃんにとって大事なのはおばさんで、あんたがどう考えていようが何をしようが、全く眼中にないってことだよね。連れ出すだの何かしてやるだの、よけいなお世話なんじゃない? 琴子ちゃんはおばさんの望むように医者になって、病院の経営者になることしか考えてないんだろ」
梅宮は美奈子をちらりと見ると、口の端を曲げてにやりと笑って言い加えた。
「むろん琴子がどんなに頑張ったところで、おれはあの子に病院をゆずる気はさらさらないけどね」
見え透いた挑発を、美奈子は黙殺した。
代わりに隣の真由子が梅宮を睨んだが、梅宮はそ知らぬ顔で、
「母親の希望を叶えるために一生懸命だなんて、琴子ちゃん、かわいいね、けなげだね。薄情者のお兄さんとは大違いってところだよね」
薄情者と言われても知明は気にする様子もない。
一方真由子は我慢できなくなった様子で、口を開いた。
「喧嘩売ってるんじゃないでしょうね、少年」
梅宮はいぶかしげに眉をひそめて真由子を見た。
「喧嘩? なんでですか? それと真由子さん、おれは少年じゃなくて、梅宮紀行です。名前でも苗字でも、どっちで呼んでくれてもかまいませんから」
真由子は腕組みをした。
「梅宮くん──梅宮くんと呼ばせてもらうわね。梅宮くんは、桜井のおばさんのことをよく知らないから、そういう風にいえるんじゃないかしら」
「そりゃ、知らないといえば知らないですけどね。電話で話したぐらいで、直接会ったわけでもありませんし。ですが、それを言うなら真由子さんだって、一緒に住んでいるわけでもなし、おばさんと四六時中顔を合わせているってのでもないでしょうに、そんなに桜井のおばさんについて詳しいんですか? それともお隣同士、門の前で立ち話でもする仲なんですか?」
人を食った調子でそう訊ね返されて、真由子は鼻白む。
梅宮は美奈子をちらりと見ると、口の端を曲げてにやりと笑って言い加えた。
「むろん琴子がどんなに頑張ったところで、おれはあの子に病院をゆずる気はさらさらないけどね」
見え透いた挑発を、美奈子は黙殺した。
代わりに隣の真由子が梅宮を睨んだが、梅宮はそ知らぬ顔で、
「母親の希望を叶えるために一生懸命だなんて、琴子ちゃん、かわいいね、けなげだね。薄情者のお兄さんとは大違いってところだよね」
薄情者と言われても知明は気にする様子もない。
一方真由子は我慢できなくなった様子で、口を開いた。
「喧嘩売ってるんじゃないでしょうね、少年」
梅宮はいぶかしげに眉をひそめて真由子を見た。
「喧嘩? なんでですか? それと真由子さん、おれは少年じゃなくて、梅宮紀行です。名前でも苗字でも、どっちで呼んでくれてもかまいませんから」
真由子は腕組みをした。
「梅宮くん──梅宮くんと呼ばせてもらうわね。梅宮くんは、桜井のおばさんのことをよく知らないから、そういう風にいえるんじゃないかしら」
「そりゃ、知らないといえば知らないですけどね。電話で話したぐらいで、直接会ったわけでもありませんし。ですが、それを言うなら真由子さんだって、一緒に住んでいるわけでもなし、おばさんと四六時中顔を合わせているってのでもないでしょうに、そんなに桜井のおばさんについて詳しいんですか? それともお隣同士、門の前で立ち話でもする仲なんですか?」
人を食った調子でそう訊ね返されて、真由子は鼻白む。