フライング

「さむーいっ」

「うー。さむっ」


私たちの間を、ヒュウッと冷たい風がすり抜けていった。

冷えた頬がチクチクと痛くて、思わず手のひらで覆ったけど。

「余計に冷たいしっ」

指先は、思ってた以上に冷えていた。

逆効果だった、とブツブツ文句を言う私を見て、彼があははと笑う。

「もーっ。笑わないで」

「くくくっ。ごめん、ごめん」

怒らないで、と付け足した彼が、私の頭を優しく撫でた。


「………それ、反則だよ」

口には出さなかったけど。

彼もきっと、わかってると思う。


「私、冬ってきらい」

「そうなの?」

「うん。寒いの苦手だから」


さっきみたいに肩を抱いてくれたら。

もっと触れてくれたら。

きらいな冬だって、好きになるのに。

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