STEP UP
もう一度
「結先輩」
目の前の活字から顔をあげれば、さっきまですぐ横にあった橘君の姿がなかった。
声がしたのは背中のほうで、ゆっくりと振り返れば、彼が手招きをしている。
「なに?」
「ん、ここに立って」
指さされたのは、やっと見慣れてきた彼の部屋の壁で、クリーム色をした壁紙の前に顔を向ける。
ベッドの横に広げられたふかふかとしたラグの上に座って読んでいた文庫本を、数分前までは彼が向っていただろうノートの横に置いて立ち上がった。
「で、なんでしょうか」
指定された場所に立って、久しぶりに使った敬語はちょっとした緊張感のせい。
「ドキドキする?」
顔のすぐ横に置かれた手。
ほんの少し見上げた先には見慣れない彼の顎のライン。
耳元に寄せられた唇から発せられた少し低めの声にさっきまで何とか平常を保とうとしていた心臓が少しずつ速さを増す。
「なんで?」
彼の問いかけに素直に頷きそうになる手前で、深く息をしていつもとは違う位置にある彼の瞳に問いかけた。
目の前の活字から顔をあげれば、さっきまですぐ横にあった橘君の姿がなかった。
声がしたのは背中のほうで、ゆっくりと振り返れば、彼が手招きをしている。
「なに?」
「ん、ここに立って」
指さされたのは、やっと見慣れてきた彼の部屋の壁で、クリーム色をした壁紙の前に顔を向ける。
ベッドの横に広げられたふかふかとしたラグの上に座って読んでいた文庫本を、数分前までは彼が向っていただろうノートの横に置いて立ち上がった。
「で、なんでしょうか」
指定された場所に立って、久しぶりに使った敬語はちょっとした緊張感のせい。
「ドキドキする?」
顔のすぐ横に置かれた手。
ほんの少し見上げた先には見慣れない彼の顎のライン。
耳元に寄せられた唇から発せられた少し低めの声にさっきまで何とか平常を保とうとしていた心臓が少しずつ速さを増す。
「なんで?」
彼の問いかけに素直に頷きそうになる手前で、深く息をしていつもとは違う位置にある彼の瞳に問いかけた。