STEP UP
「結」

耳元で名前を呼ぶと、小さな肩がビクっとする。
結に気づかれないようにソファーに上って、本に夢中の彼女の隣に座ってみた。

「なあに?」

返事をさえぎるように、唇を重ねれば、柔らかな感触。
目の前には結の長いまつげ。
目を閉じて、俺の胸に右手を当てる。

「んっ」

唇の間からそっと入り込ませるように、口の中にあった小さな飴を絡めるように優しく動く。
その感覚に、頭が白くなっていく。
なくしそうな理性をやっとのことで引き戻して、つぶやくように言ってみた。

「恋の味になったろ」

離れた唇が照れくさくて、やっと引き戻した理性が壊れてしまいそうで急いで立ち上がった。
結は口に手を当ててぼうっとした顔で俺を視線だけで追ってきていた。

キスの後、口の中に広がるのはさっきとは違う味。

「苺ミルクだ・・・」

やっと意味が分かったのか、小さく笑うと細い指を唇に当てる。そのしぐささえ俺を煽るには十分で、またそばに戻ってしまいそうになった。

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