南の島で見た夢
okinawa
「ねぇ、里美!沖縄行こうよ!」
小学生の頃から仲が良かった美月が、旅行パンフレットを持ってニコニコしている。
「急にどうしたの?」
私は驚いて携帯を置いて答えた。
「だって、このまま就職したら、旅行なんてもう滅多に行けないと思うの!!」
私達は22歳。
美月はこれまで、高校を卒業してから就職せず、地元のお弁当屋さんでアルバイトをしていた。
体の弱いお母さんがいるため、シフトに融通のきくアルバイトとという選択をしていたのだ。
でもここ最近お母さんの体調が良くなってきているからか、来月からそのお弁当屋さんの社員になることが決まっている。
高校の時の修学旅行は、沖縄だった。
でも美月は行かないと言った。
きっとお母さんの体調のことだと思ったが、私にはどうしようもできないので、何も言わなかった。
代わりに、私も修学旅行を一緒に欠席した。
私達二人と先生一人の補習授業中、美月が"ありがとう"とメールを送ってきた。
あの時の美月の笑顔は、少し涙目だった。
その美月が旅行に行きたいと言っている。
それに私も、正直言って沖縄には行ってみたかった。
私は親戚のやっている小さな中華料理屋さんで働いていたから、休みも融通がきく。
「よし美月、沖縄行くかー!」
私がそう言うと美月は両手で小さくガッツポーズをして
「やったぁ♪」と喜んでいた。
こうして行くことになった7日間の沖縄旅行。
この旅行から、全ては始まりました。
もしこの時、行かないと断っていたら…
沖縄じゃなくて、他の場所にしていたら…
今こんなに毎日泣くことにはならなかった。
だけどあの日の選択は、やっぱり後悔したくない。
どんなに泣いても、涼さんに出会えたことは本当に幸せだと思っています。