Arrivederci!
ボクは野良猫。
黒くてつやつやの尻尾が自慢で胸をはって生きてる、サ。
誰にも指図されない自由気ままな黒猫。
毎日を必死に生きてようやく一日分の食料にありつける。
それからは夜の草原でのんびり星を眺めるのがボクの日課だった。
それが一人じゃなくなったのはいつから?
「キミの目って、お星様みたいだねっ」
ボクを覗き込んだのは小さな少女だった。
「なんだよ、邪魔だよう。此処はボクの場所なんだ」
ボクの声なんか無視して少女はボクの隣に嬉しそうに腰掛けた。
「私、響っていうの」
ヒビキ?
変な名前だな。
ボクは思い切り笑ってやった。
「キミはなんていうの?」
「ボクに名前なんてないサ。だって必要ないもの」
「名前ないの?」
少女は目を丸くして、すぐに嬉しそうに笑った。
「じゃあ私が名前つけてあげるっ」
今度は考えるように腕を組んで黙り込んだ。
コロコロ表情が変わるんだなぁ、変な奴。
「“チノ”ってどう?」
ボクは目を丸くして少女を見た。
変なの。
どうしてそんなに楽しそうに笑ってるの?
どうしてこんなに嬉しくなるの?
「チノ」
かっこよい名前だね。
気にいったよ。
「でも猫ってすぐに忘れちゃうんだって。だから私の事なんてすぐに忘れちゃうかなぁ?」
寂しそうな顔をする少女にボクは首を傾げた。
「忘れたりするもんか」
名前を忘れたりなんかしないサ。
キミを忘れたりなんかしないよ。
これがボクとキミの出会いだよ。
ね、忘れてないだろう?
だから、サ。
どうか、ボクを見つけて。