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「いや、ちょっと待て星也。自己紹介の前に‘‘鳳桜”について説明しようと思ってんだけど、いいか春道?」
急に真面目な顔になる悠登。
「好きにしろ。」
その言葉とともに少し空気が張り詰めた気がした
「乙夏ちゃんは、転入してきたばっかでまだ俺らのこと知らないと思うけど、俺らは‘‘鳳桜”っていう暴走族のグループなんだ。」
はっ?
え、まって、どゆこと?
ほうおう?暴走族?なにそれ
「ちなみに規模は東関東一帯を占めてるまぁ要するに、東関東No. 1ってこと」
話は始まったばっかりだけど既に頭がついていってない
いやいやいや、だってみんなまだ高校生だよね?
次元の違う話をされてるようでさっぱりわからない。
「で、この‘‘鳳桜”を取り仕切ってるのが総長の春道ってこと。」
一人用のソファに悠々座りながら私の目をじーっと見つめる金髪の彼。
かなり今更だけどこの人も本当に美形。
立てある金髪のメッシュのかみに
切れ長のキリッとした目
高く筋の通った鼻
薄い唇
そして、体全身に響く低い声。
目を見つめられただけで体が火照ってくる
すると春道と呼ばれる彼がゆっくりと口を開いた
「お前には鳳桜に入ってもらう。」
えっ?
「返事は?入らないなんて言わせねーけど」
ふっと笑って、私を見るこの人
いやいやいや!!
「ちょ、ちょっとまって!私、別にそう言うつもりは....」
「昨日、」
きのう...?
「昨日悠登に助けてもらったんだろ。」
昨日のことを思い出す、確かに私は助けてもらった。
でも、それは私が望んだことではない
「私助けてなんて頼んでな..「あん時、助けてもらってなきゃお前、今頃学校これてねえぞ。」
強引に話を切られた
でも、彼の言ってることは間違ってない
「だけど...。私が入ったところでなにになるわけ?」
絶対あしでまとりになって、捨てられるだけじゃん。そんなの目に見えてる。
「支えてくれればいい」
謎な言葉だけかえってきた
「ささえる....?」
なにそれ
「今の鳳桜にはお前みたいなのが必要なんだ。どうしても嫌か?」
私のことをなんも知らないくせに....
そう思って彼の顔を見ると
少し眉を眉間に寄せこちらを伺うような目で見てくる
うっ....
見たことをかなり後悔した
しばらく目があったままの状態
その間に私は今日あったことを思いだしていた。
少しの時間だったけどこの人たちといて居心地が悪いとは感じなかった
逆に、良かったくらい。
でも、
でも。
私はそう簡単に人を信じちゃいけない
私が信じたことでまた、誰かが傷つくのは見たくないの
そんな私を知ってもこの人たちは裏切ったりしないなんて言える?
そんなのきっとありえない。
そんなこと思ってると目がしらが熱くなっていくのが自分でもわかった。
思わず顔を伏せる
するとソファーから立ち上がった彼は私にゆっくりと近づいてきた
そして私の顎をクイッとあげ
優しく手を頬に当てて
涙をそっとふき取ってくれた
「乙夏、お前が俺らを信じてくれたら俺らは絶対お前を守る。」
絶対...??
「絶対なんて、わからないじゃん...」
この世にそんな言葉は実在しない。
「じゃあ、俺らで試してみるか?本当に絶対があるのか。」
見据えるように瞳をみつめる
信じても、いいのかな....?
私はそっと空を見上げあの人を思い出す
『いいんじゃない?この人たちなら。』
そんな声が聞こえた気がした。
気のせいなのはわかってるけど
「....わかった....。」
もう一回、
もう一回だけ信じさせてください。
「私、鳳桜にはいります。」
今を、きちんと生きるために
「そうか...」
そう言いながら優しく微笑む
「今日から乙夏は俺らの仲間だ。何があっても全力で守ってやる」
そう言ってポンポンと頭を叩いた彼は
いきなり立って
「鳳桜10代目総長、二階堂春道(にかいどうはるみち)だ。よろしく」
というと座っていた私の手を勢いよくひき立ち上がらせた
その仕草も、かっこよくて思わず見とれてしまった
「んじゃあ俺も改めて、鳳桜10代目副総長 桜庭悠登(さくらばゆうと)よろしくな!」
悠登が、副総長なんて驚いたけど納得もできる。お兄ちゃんみたいだしね
「んじゃ、つぎおれ、鳳桜10代目幹部の一条蓮(いちじょうれん)蓮でいいからさ!」
鮮やかなオレンジの髪の毛とくしゃっと笑う笑顔が彼の魅力を存分に引き出している
「同じく10代目幹部の橘聖月(たちばなみづき)みづきでいい。」
なんかとっつきにくそうな人だけど、さっきからの言動はさりげなく優しい
「最後は俺!早乙女星也(さおとめせいや)乙夏っちのたまごやきめっちゃおいしかったし〜大好き!またつくってね?あ、あと!せいやでいいから!」
乙夏っちって....
出会ってそんなにたってないけど弟みたいに可愛くてきれいな金髪を前髪アップしてるのもすっごく似合ってる
ゆっくりとみんなを見渡す
一人一人が自分を持っていて本当にカッコイイ
いつか自分もこうなれるようにと願いを込めて
「今日から、お願いします。」
と深々あたまをさげた