believe
倉庫を出れば
もう辺りは真っ暗で、
空に光る月だけが異様に輝いていた。
さすがに疲れたな。
なんて思いながら倉庫をでると、ふといつもとはちがう何かに気づく
「あれ?今日バイクじゃないの?」
あのハデハデのかっこいいバイクがないなんてかなり珍しい
「あ、乙夏ちゃんいいとこつくね〜」
私のふとした疑問に返ってきたのは、
謎にニヤニヤしている悠登の言葉
え、なに.....?
最近少しわかったことがある
それはこの桜庭悠登という男がかなり変人だということ
まさか本人の前では言えないけどね
そしてまたまた本題に戻る。
「春道がさ!乙夏っちがここにいるって聞いた瞬間バイクに乗るのも忘れて走ってっいっちゃったんだよ!!」
ケラケラと笑いながら話す星也に、春道の眉間のシワはどんどん増すばかり
星也!それ以上はやめときなさい!
とは、思うけどそんなに心配してくれた時のことを、もっと知りたいって思ってしまう。
まぁその後で星也がお説教されたかは
ご想像にお任せするとして.....
「はっ!?おまえら俺のこと忘れてたのかよ!」
いきなり修羅場を切り裂いた蓮
驚きすぎて目がドライアイになるよ
「あら、やきもち?蓮くん」
「ははーん。そういうこと言うんだ?
.....だったらこうだっ!!」
「いたたたっ!ギブッ!ギブッ‼︎‼︎」
からかうつもりでいったら、まさかの羽交い締め
こいつ.....助けてやったのにっ!!!
「.......な。乙夏」
どさくさに紛れて耳元で囁かれた言葉。
それと同時に離された腕。
「フッ....かわいいとこあるじゃん」
『ありがとな。乙夏』
耳元で囁かれた、たった5文字の言葉はとても嬉しくて魔法のようだった
そして、私と離れたと同時に
彼はニコッとはにかみながら前を歩く春道以外の四人の方へ駆け寄っていった
「乙夏.....」
「んー、なに?」
蓮が向こうチームに入った後、二人きりになった私と春道
今までは前の四人のコントみたいなのを微笑ましく鑑賞してただけで
無言状態だったんだけど.....
「..............」
「..............」
「..............」
「.............
や、なに!?」
話しかけてきたくせに、だんまりをつらぬく春道
意外と短気な私は思わず突っ込んでしまった
「怖かったか?」
綺麗な、真っ黒な瞳で私を見つめる彼。
こちらに向けられるのがもったいな位くらい
そんな瞳を見つめ返し答える私
「怖いというか、なんというか.....特にって感じかな....?」
昔からケンカとかには慣れてる方
思い出したくないことは、山ほどあるけどね
「そうか」
ゆっくりと外された視線をもったいと思うのは、矛盾しているのかもしれない。
「うん」
彼は私の考えてることを感じたのか、それ以上は何も聞いてこなかった。
「ねーねー!乙夏っち〜」
それからまた少しして静かな夜に響いた星也の声
「どーしたのー!」
「おーなーかっ!すいてねーー?!」
はっ!そういえば!
ギュルルルルル
「あ.......」
反射的に手でお腹を抑える
「フッ......。そんな腹減ってたのかよ」
タイミングが良すぎるという程タイミングよく私のお腹がなり
春道にも聞こえているというMAX最悪状態
「う、うるさいっ!!」
恥ずかしすぎる......
あまりにも赤くなった顔を見られるのがやで
私は彼をおいていきなり歩くスピードを速める
「おい、まて。」
ーーパシッ
「そんな速さで、俺からにげれるとおもってんの?」
なんとも余裕そうな微笑みを見せた彼
きっと今の私はかなり乙女な顔になっているはず
やっぱり、春道の笑顔はずるい.....
さりげなく腕を掴まれて、
さっきの私の早歩きの何倍もの速さで進んでいく
「春道ちょっ、はやい!!」
ボルト並みに早いんですけど!?
「腹減ってんだろ?」
「......はい」
こやつ、いちいち痛いところをついてくるな。
でも、掴んでいる手はすっごく優しくて思わず顔が緩んでしまう。
って!
そんな顔見られたら絶対バカにされる!
そんな危機を感じた私は、しかめっ面をしたまま彼らのもとに向かった
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*
「え、なに?なんで乙夏おこってんの?」
笑いを我慢するように聞いてくる蓮は
ほんっとに意地が悪い。
「う、うっさい!!蓮まで!」
もう、なんなのほんとに!!
そんなことを思いつつ、さっきから聖月が一言も言葉を発していないことに地味に関心。
多分
「何で喋んないの?」
なんて聞いたら
「は?しゃべる意味。」
なーんて言われそうだから、黙っとく
「ほら、乙夏ちゃん。これからいいとこつれてってあげるから機嫌直して?」
ボーッと考えていた私に突如話を振ってきたのはいつもの優しい悠登
「いいとこ....?」
ごめんみんな、
いい予感が全くしない
まぁとりあえずご飯食べられるならいっか!
「んじゃ、はやくいこ!」
そう言って春道の腕をどんどん引いていく
「なんだよ急に」
そういって、彼が優しく微笑んでいたことに気づくわけもなく
ただただまっすぐに伸びる道を
‘‘仲間”
と歩いた、初めての夜だった