believe
階段を上がれば、少し暗い廊下に光が漏れている部屋が見つかる
一歩一歩近づき、目の前まで来たのはいいんだけど....
こ、これってノックするべき?
ふつうそうだよね?
やっぱり、いつもと違う感じで会うせいかちょっと緊張する
「ふぅーっ。」
ーーコンコン
「はるみち〜ピザきたよー?」
息を整えてからかなり大きめの声で言ったのだけれど、返事は返ってこない
これは、入っていいのでしょうか。
や、入らないと夕飯たべれないし!
そうだよ!
自分の中の何かと葛藤した結果
「はるみち〜はいるよ?」
入ることにした私
ーーガチャ
少しだけドアをあけ中をみれば、
ベットと、テレビと、テーブルしかないなんともシンプルな部屋があった
春道っぽいっちゃぽいけどね
ふと、ベットに目をやる
するとそこには、綺麗な顔をしたままのかれの寝顔があった
「ほんっと綺麗な顔....」
少し近づき顔を覗き込む
肌は、女の子みたいに綺麗で
長い睫毛に、少し開いた薄い唇
そこから漏れる小さな吐息さえも色っぽく思えて
まさに、男版『眠れる森の美女』
本当童話の世界でしか会えないようなイケメンだよねあなたさんは
「バーカ」
小さな寝息を立てている今みたいな、無防備な時でしかこんなこと絶対言えない
「よし、起こすか!」
この綺麗な顔をいつまでも見ていたいけどみんなを待たせるわけにもいかないし
「はるみちー!おーきーてー!」
と、大きく体を揺すって起こす
んだけど!!
「全然起きない!!」
大きく体を揺すっても
耳元で大きく声を呼んでも
全く起きないこやつ。
もはや、こっちが疲れちゃったよ
「もう!みんなと先食べちゃうから!」
このまま起こそうとしても、もうおきなさそうだったため
ここで退散することにした。
はずなのに...
ーーグイッ
「えっちょっ!!」
「誰が行かせるかバーカ」
突然引っ張られたかと思えば、目の前には春道のはだけたTシャツ
「ちょ!え、なに!?おきてるの?」
あんまりの突然の事すぎて、未だパニック状態の私
「ねてる」
「や、起きてるでしょーが!!」
抱きしめられている形でこんな雰囲気も何にもない会話をしてると
なんだか力が抜けてくる
「おまえ、ちょっと今油断したろ」
「へっ!?なんでわかったの」
反射的に少し体を離し、彼の目を見て言えば
また、ぎゅっと引き寄せられて
「抱きしめてるからわかる」
なんて、耳元で甘く囁かれてしまった
やばい、今絶対顔赤い...
俯きがちに彼を見れば、
「なに、てれてんの?」
とでも、言いたげな顔があって
「はるみちのバカっ!はなせ!」
反撃に出るため、私は彼から離れてベットから降りる
ちょっとは、赤いのおさまったかな...
とりあえず、一安心。
とも、思ったんだけど....
「な、なに」
離れた後、どんどん眉間にシワが寄っていく春道
もしかして怒った..?
や、でも何に怒ってるの
特に思い当たる節もなく、なんとなく気まずい空気が流れる
「その格好なに」
少しの沈黙の間、先に口を開いたのは彼
か、格好?
って!!
私、こんな格好してたんだった!!
「や、その....聖月に」
「は?聖月がなに」
色々言いたいことはあるんだけど、逆にありすぎて言葉が詰まって出てこない
そんな私を見かねたのか
はぁ
と、小さくため息をつき何やら動き出した彼
「ど、どうしたの?」
「これ着ろ」
そう言って出された真っ黒の上下ジャージ
「あ、ありがと」
「ん、」
Tシャツの上から春道から貸してもらったものを着れば
やっぱり両方ぶっかぶかで、
下ジャーなんか、引きずるくらい長くて歩きづらい
「そういや、夕飯きたんだっけ?」
「あ、もうとっくにきてるよ」
春道の部屋に来てからなんだかんだして
15分はたってる
「じゃいくか」
「そーだね!」
ずっとお腹すいてたし、早く食べたい!
けれど、大きすぎるジャージでやっぱり歩きづらくて
自然とペースも遅くなる
わ、転びそう!
下に降りる時の階段は今の私にはめちゃくちゃ大敵。
「乙夏おんぶしてやろうか?」
「はっ!?」
またも突然爆弾発言をする彼
「だって、それぶかぶかすぎて降りれねえだろ」
「や、そうだけど着せたの春道じゃん!!」
おんぶとか緊張するし、重いから絶対ひかれる
「うっせえ、だまっていうこときけ」
そう言ってパーカーのチャックをMAX上まで上げ視界を完全にとじられた私。
最近よくある、あのフードまでチャックが付いてるやつね
「って!ちょ!待って、なにこれ!」
「これじゃ、一人で降りられねーな。」
「わっ!へっ!?どうなってるの?」
体がフッと浮いたかと思えば、太ももと首に回された手
こ、これはまさか
お姫様抱っこ!!!?
「はるみちっ!おろして恥ずかしい!」
脚をバタつかせながら言う私に
「暴れたら勝手に落ちるぞ」
なんて怖いこと言うから、すぐさま黙った私。
だけど、だけどやっぱり
恥ずかしすぎる!!!
身体中が、あっつくて
この時ばかりは、こんなパーカーがあって心から良かったと思う
「ほら、ついた」
ゆっくりと私を下ろす春道
ありがたいんだけど...!
「チャックもおろして!!」
「....あぁ、そうだったな」
絶対わざと忘れてるふりしてるでしょ!!
「はぁ...つ、つかれた」
開けてもらった瞬間、冷たい空気が私の顔に当たって
火照った体には、気持ちいい
でも、
「疲れるようなこと、なんもしてねーじゃん。」
そう言ってフッと笑った顔で
「う、うるさい!色々つかれたの!!」
またすぐ、赤くなってしまう私は
「ふーん。ま、いいけど」
どうにかしてしまってるのでしょうか?