1/2~あなたに捧ぐ花言葉~


彼ともう一度手を繋ぐ。


すると、風が強く吹いた。


―――ザァッ

屋上庭園の桜は、今日満開になっていた。

綺麗なはずなのに、歪んでいく。

ポロリポロリと涙が溢れた。

お母さん、ごめんね。

もう少しだけ待っていて。


…私はまだ死ねないみたい。



揺れる桜と桜吹雪を手を繋いで眺める。



「私の名前ね、満桜(まお)っていうの。満開の桜って書いて、満桜」

「満桜、か、いい名前だね。…花言葉って、知ってる?」

「んー、聞いたことはあるけど、あんまり知らないかな」

「…桜にも、花言葉があるんだ。桜の花言葉は…優れた美人、純潔、精神美、淡泊…満桜ちゃんにピッタリだね」


そう言って彼は微笑む。

どうしてそう恥ずかしいことを堂々と…っ


…私の顔はきっと真っ赤だ。


「あれ、満桜ちゃん真っ赤だよ?」

バレてるし…

彼はクスクス笑う。

さっきまで大人びた感じだったのに、笑うと途端に歳相応な雰囲気になる。



< 11 / 67 >

この作品をシェア

pagetop