1/2~あなたに捧ぐ花言葉~



私は母がなくなると

すぐに施設に入れられた。

誰も私を引き取ろうとはしなかった。


私は要らなかった。


それが自殺未遂の要因でもあった。


彼と出会い、


それでも


何処か不安定だった私を拾ってくれたのが


咲良さんと雅貴さんだった。


『あなたは満桜ちゃんって言うのね。
私は咲良。あなたの名前にもサクラが入っているから、お揃いね』


そう言って彼女は微笑んだ。

ずっと隣にいる男の人も

私と目線を合わせて、同じように名乗った。


『初めまして、僕の名前は雅貴』

『初め、まして』


男の人は一瞬考えるような顔をすると、

私をまっすぐに見据えた。


『…満桜ちゃん、僕たちと一緒に暮らさないかい?』


施設の子ども達は

こういう風に引き取られることがある。


嬉しくはあった。

でも、引き取られるということは

その家の子になるということ。


つまりは、お母さんの子ではなくなる

ということ。


私は幼いながらに、それが嫌だった。


だから、断ろうと思った。


でも、私を見つめる2人の目が優しくて、


苦しかったから。





私はとある条件を出した。



それは、姓をこのままにしておくことと、


2人を名前で呼ぶこと。




お母さん、お父さんと呼ぶことはしない


と、それでもいいかと問うた。


2人は当然のように、

なんの躊躇いもなく


頷いた。








私はこの瞬間から既に2人に甘えていた。


私が出している条件は


ハッキリ言って家族とは言えないような


そんな条件なのに


2人は嬉しそうに微笑っていた。



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