1/2~あなたに捧ぐ花言葉~
―――――…p.m.6:00。
「そろそろ帰ろ」
「よっしゃぁ…帰れる……」
「お疲れ様」
霖也が中々覚えられず、教えたりするうちに気づけば6時になっていた。
2人はこの高校から歩いて10分ぐらいのところに住んでいるから、ここでお別れ。
「じゃあね」
普通に駅に行こうとすると、2人に留められた。
「どうせだし、駅まで送るよー」
「でも遠回りになるし…」
「何かあったら寝覚めが悪いだろ」
「大丈夫、何も無いよ…」
「いいから黙って送られとけば」
「…はい……」
と、まぁ、結局押し切られました…。
「満桜ちゃん何処で降りるのー?」
「え、、、」
「そんなストーカーでも見るような目で見ないでよー、普通に気になっただけ」
……私の降りる駅は、この駅から5つ目の駅。
「…N駅」
「ふーん、結構遠くから来てるんだねー
………だから、そんな目で見ないでって」
「でも霖也ならやりかねないでしょ……」
「酷いなーーははっ」
やっぱり
「その笑顔、嫌い」
「うわー、なにそれ傷つくー」
「………………」
「そんでスルーか…流石だわ満桜ちゃん」
そんな、
色んな物がごちゃまぜになった笑顔……嫌いだよ。
あの時の彼の純粋な笑顔が忘れられない私には、その笑みは、痛い…。
…あー、ダメ、他の事考えよう。
「霖也と霜也って、一卵性?二卵性?」
「一卵性だよー、それにしても満桜ちゃん珍しいー…」
「え?何が??」
今の会話に珍しさなんて無かったはずだけど……?
「だって、俺達出会った大体の人に、一卵性って言わなくてもバレてたしー…だから、満桜ちゃんは珍しいの」
「なるほどね」
でも、改めて2人を見るけど、私には一卵性には感じられない。
霖也は、金髪、言動も髪色に違わずチャラチャラ。
霜也は、多分地毛で、青みがかった独特な黒、こちらも髪色に違わず飾り気が無くて冷たい。
………見える、けど、多分見えるだけ。
ううん、2人がそう見せてるだけ。
だと、思う。
「……やっぱり、普通の兄弟にしか見えない」
「俺ら、そんな似てないかなー?」
「んーーーーーー―――あ、2人とも、好きなケーキは?」
「ショートケーキ」
.......えーっと?
「ねぇ、霜也?」
「……なに?」
「私、2人に聞いたはずだけど…?」
「それ、どうしても言わないとダメ?」
「だめ」
「…はあ……レアチーズケーキ」
ほぅほぅ……
「じゃあ、次は――…」
「…まだ、あんの?」
あの、霜也……そこまで、嫌そうな顔しなくても……そろそろ私も傷つくと言うか…………。
「もーー、霜也ー?女の子にそんな態度しちゃダメだって、いつも言ってるじゃーん…女の子は大事にしなきゃー」
「それ、霖也にだけは言われたくない」
「あ、好きなチョコは?」
「ミルク」
「…………」
「ねぇ、そ…」
「ブラック」
ほぅほぅほぅ………
「お父さん子?お母さん子?」
「父さん」
「………母さん」
「好きな色は?」
「白ー」
「……黒」
「んーーーーあと……」
「…はあ……もういいだろ」
「あ!あと…好きな女の子のタイプは?」
「女の子ー♡」
「……特になし」
ほぅほぅほぅほぅ………
「妹はいるの?」
『いる』
「可愛い?」
『可愛い』
「………………取りあえず、質問は終わりかな」
おわかり頂けただろうか……
《中身全然ちがう…………》
「あの、2人とも本当に双子……?」
「本当だってーー」
「違い過ぎない!?
声揃ってたの、妹が可愛いかだけだよ!?
あと、好きな女の子のタイプはある意味合ってたけど………霖也に至っては…女の子だし……もうタイプもへったくれも無いと言いますか……」
「まあまあ!中身は違うけど、生物学上俺らは立派な一卵性の双子なわけだし、細かいことは気にしなーい」
いや、いいんだよ?
…別に、2人が双子らしかろうが、そうじゃなかろうが、私にはそんなに関係ない。
でも、妹好きな部分が一緒って事は、根っこは一緒って事で……
根っこが一緒って事は、どちらも彼である可能性が同じって、こと、だから……話が戻っちゃう。
またわからなくなる。
でも、もうひとつ…もう1つ、分かる事がある。
根っこしか、同じじゃないって事は、それ以外は全然違うって事
不自然なくらいに…違う。
意図的に、ずらしているみたいに。
…………そう、
「歪んでいる」
その言葉が一番ピッタリ。
「……んー?満桜ちゃん、何か言ったー?」
ここまで人を変える出来事って、一体なに………?
「ううん、何でもない」