1/2~あなたに捧ぐ花言葉~
「うまっ!!!!」
「うまいな………」
「美味しいでしょ!私の一番好きなプリンなんだよ」
自分の好きなものを誰かに褒めてもらうのは素直に嬉しい。
あれから私は落ち着きを取り戻した。
私が思い出していたもの、それはお母さんの死に際だった。
誰よりも近くで見ていた光景。
小さい頃、特に咲良さん雅貴さんと出会う前は簡単に思い出せた。
でも、最近思い出せなくなっている。
思い出そうとすると頭痛と目眩に邪魔をされるようになった。
そして、何かの弾みで思い出すと今回のようなことになる。
フラッシュバックが止まらなくなり、意識を失う。
いつか何も思い出せなくなる日がやってくるような気がして、強い不安に苛まれる。
幸せで穏やかな暮らしを送れば送るほど、自分の中からお母さんが消えていくようで悲しい。
自分ばかり幸せになっていいのか。
お母さんは私のせいで死んだのに。
悩んでばかり。
でも、今はこの人たちのために死ねない。
咲良さん雅貴さんを悲しませないために。
「満桜ちゃん?」
名前を呼ばれて私の思考は霖也に遮られた。
「なぁに?」
「手止まってるけど、満桜ちゃんの食べてもいーの?」
にこにこにこにこ……そんなキラキラな王子スマイルで言われてもあげないんだから!!!
「絶対だめ!」
「おい霖也、食い意地張るなよ」
「だってこれ超美味しいじゃん!」
「お前はガキか…………」
今は、前を向こうと思う。
2人のどちらがあの人なのかわからないけど、少しずつ、少しずつ彼らのことを知っていきたい。
お母さん、もう少しだけ待っていてね。
私はちゃんとあの人にお礼を言って、咲良さん雅貴さんに恩を返して、そしたらちゃんと逝くから。
身勝手で最低な私を許して。
私はあの人に会ってから、簡単に死ねなくなってしまった。
あの言葉に勝てる言い訳が思いつかない。
やりたいことしっかりやったら、またお母さんを振り返るから。
それまで、ばいばい。
お母さん。