10回目のキスの仕方
* * *
「あらま、寝ちゃった。」
「飲ませすぎ。明日ふらふらかも。」
「可愛いねぇ、美海ちゃん。それに頑張り屋さん。」
美海はテーブルに突っ伏して眠っている。そのまま寝ると身体がきついだろうと思って圭介は抱き抱えて自分のベッドの上にそっと下ろした。
「随分大事にしてるのね。」
「…まぁ。」
「否定しないんだ。」
「否定する理由がないし。…というか、そんなことより何しに来たわけ?」
「んーと、あんまり深い理由なかったんだけど、でも来てよかったかも。お母さんに言っちゃおーっと。」
「冷やかしにきたわけ?」
圭介は声を落として言った。
「久しぶりに圭ちゃんに会いたくなったの。全然実家帰ってこないし。」
「…春姉、嘘。」
「…圭ちゃん鋭いなぁ。」
小春はふぅっとため息をついてから口を開いた。
「喧嘩した。」
「そんなことだろうと思った。でも、そんなことでわざわざここまで来たわけ?」
「わざわざって言うほどの距離じゃないし。」
「仕事は?」
「休み~。」
「なるほど。」
「でも来てよかった。美海ちゃんに会えたし。」
「…気に入ったんだ。」
「可愛い子大好きだもん、あたし。」
「知ってる。」
ふーっと長く、小春が息を吐いた。その眼差しは美海を捉えている。
「ねぇ、圭ちゃん。」
「今度は何?」
「美海ちゃんともっと話したいなーあたし。圭ちゃんのどこが好きかとか知りたいし。」
「悪趣味。」
「実家に連れてこれないかなぁー。お父さんもお母さんも喜ぶと思うし。もちろん亮兄も日和も。」
「…俺は構わないけど、美海は…わからない。」
「どうして?」
圭介はすーすーと寝息を立てる美海を見つめた。あどけない寝顔はいつ見ても幼い。
「美海は、…何か…まだ踏み込めないところがたくさんあるから。」
「ふーん。面倒くさくはないの?」
「…そう、だな。そんな風に考えたことはない、かな。」
「放っておけない?」
「…に近いかも。危なっかしくて、心配。」
「なるほど。でも、危うい感じはあるかも。」
小春は残っていた缶ビールを飲み干した。
「んじゃ、ラブラブな二人の邪魔しないようにあたしはホテルに戻ります。」
「ホテルとってたんだ。」
「圭ちゃんの家狭いもんー。泊まるのは無理。じゃ、帰省のこと考えておいて。美海ちゃんも気兼ねしないで…って言ってもあんまり意味ないかもしれないけど、みんな喜ぶからおいでって伝えておいて。」
嵐のようにゴミだけ残して、小春はバタンと玄関のドアを閉めた。その音に目を覚ますことなく、美海は眠り続けている。圭介はそっと手を伸ばして、その頭を撫でた。
「…踏み込むつもりは…あるんだけど。」
タイミングを考えている。それはもう、多分ずっと。
「あらま、寝ちゃった。」
「飲ませすぎ。明日ふらふらかも。」
「可愛いねぇ、美海ちゃん。それに頑張り屋さん。」
美海はテーブルに突っ伏して眠っている。そのまま寝ると身体がきついだろうと思って圭介は抱き抱えて自分のベッドの上にそっと下ろした。
「随分大事にしてるのね。」
「…まぁ。」
「否定しないんだ。」
「否定する理由がないし。…というか、そんなことより何しに来たわけ?」
「んーと、あんまり深い理由なかったんだけど、でも来てよかったかも。お母さんに言っちゃおーっと。」
「冷やかしにきたわけ?」
圭介は声を落として言った。
「久しぶりに圭ちゃんに会いたくなったの。全然実家帰ってこないし。」
「…春姉、嘘。」
「…圭ちゃん鋭いなぁ。」
小春はふぅっとため息をついてから口を開いた。
「喧嘩した。」
「そんなことだろうと思った。でも、そんなことでわざわざここまで来たわけ?」
「わざわざって言うほどの距離じゃないし。」
「仕事は?」
「休み~。」
「なるほど。」
「でも来てよかった。美海ちゃんに会えたし。」
「…気に入ったんだ。」
「可愛い子大好きだもん、あたし。」
「知ってる。」
ふーっと長く、小春が息を吐いた。その眼差しは美海を捉えている。
「ねぇ、圭ちゃん。」
「今度は何?」
「美海ちゃんともっと話したいなーあたし。圭ちゃんのどこが好きかとか知りたいし。」
「悪趣味。」
「実家に連れてこれないかなぁー。お父さんもお母さんも喜ぶと思うし。もちろん亮兄も日和も。」
「…俺は構わないけど、美海は…わからない。」
「どうして?」
圭介はすーすーと寝息を立てる美海を見つめた。あどけない寝顔はいつ見ても幼い。
「美海は、…何か…まだ踏み込めないところがたくさんあるから。」
「ふーん。面倒くさくはないの?」
「…そう、だな。そんな風に考えたことはない、かな。」
「放っておけない?」
「…に近いかも。危なっかしくて、心配。」
「なるほど。でも、危うい感じはあるかも。」
小春は残っていた缶ビールを飲み干した。
「んじゃ、ラブラブな二人の邪魔しないようにあたしはホテルに戻ります。」
「ホテルとってたんだ。」
「圭ちゃんの家狭いもんー。泊まるのは無理。じゃ、帰省のこと考えておいて。美海ちゃんも気兼ねしないで…って言ってもあんまり意味ないかもしれないけど、みんな喜ぶからおいでって伝えておいて。」
嵐のようにゴミだけ残して、小春はバタンと玄関のドアを閉めた。その音に目を覚ますことなく、美海は眠り続けている。圭介はそっと手を伸ばして、その頭を撫でた。
「…踏み込むつもりは…あるんだけど。」
タイミングを考えている。それはもう、多分ずっと。