10回目のキスの仕方
「後ろ、開けた方がいいかな?」
「いや、荷物そんなにないから大丈夫。美海、乗って。」
「はじめまして、美海さん。」
にっこりと笑った目が、圭介にそっくりだと思った。そんな第一印象。少し白髪交じりの短髪に、縁が細いシルバーの眼鏡をかけた、優しそうな人が笑顔で迎えてくれる。
「圭介の父です。疲れてないかな?」
「あ、はいっ!松下美海と申します。迎えに来ていただいてありがとうございます。」
「いいんだよ。むしろみんなには怒られてしまってね。お父さんだけずるいーってね。」
「はいはい、長い話は乗ってから。美海、乗って。」
「あ、はい。あの、お願いします。」
「うん。安全運転でいくよー。」
終始にこにこしている圭介の父に、美海はほっとした。特に怖い人を想像していたわけではないが、こうして面と向かって歓迎してもらえると、やはり安心する。
「思っていたよりもずっとべっぴんさんだねぇ、美海さんは。」
「そ、そんなことっ…。」
「春姉がすごく言いふらしたってことがよくわかる。」
「小春はすごかったぞー。帰ってくるなり、圭介に彼女がいたって大騒ぎ。」
「いつになったらあの人は人間として落ち着くんだろう。」
「圭介は年の割に落ち着きすぎだ。なぁ、そう思うだろう、美海さん?」
「えっと…あの…私も…ちゃんと落ち着きたいので…圭介くんを見習おうと…。」
「えーそうかぁ、美海さんの目に圭介はそう映るのか。父さんとしては美海さんには初々しいままでいてほしいけどなぁ。」
「また好き勝手なことを。」
車の中で繰り広げられるテンポの良い会話に、浅井家の仲の良さを感じる。そして心配になる。自分の異質さが浮き彫りにならないか、と。
「はい、到着だよ。母さん、美海さんが来てくれたよ。」
「…美海美海って、俺もいますけど。」
『まるでおまけみたいだな』と呆れ顔で言う圭介を見つめると、何とも言えない気持ちになった。
(…そんな風に扱ってもらえるのは、ちゃんと関係ができてるからですよ…って言いたくなっちゃう。)
おまけなんかではない。圭介ありきの美海というお客さんだ。一人暮らしをしている圭介が戻ってきたときにすっと溶け込める場所がちゃんとある。だからこそ、美海もこうして受け入れてもらえる。
「あらー美海ちゃん!はじめまして。圭介の母です。長旅で疲れたでしょう?お茶淹れるわね。ほら圭介、美海ちゃんの荷物運んで!」
「そのつもり。美海、あがってて。」
「荷物、運びます!」
「いいのよー力仕事なんて圭介がやれば。美海ちゃんはせっかく来たんだし、お話しましょう!」
押しの強い圭介の母に腕を引かれてしまっては抵抗のしようがない。美海は腕を引かれるままについていった。
「いや、荷物そんなにないから大丈夫。美海、乗って。」
「はじめまして、美海さん。」
にっこりと笑った目が、圭介にそっくりだと思った。そんな第一印象。少し白髪交じりの短髪に、縁が細いシルバーの眼鏡をかけた、優しそうな人が笑顔で迎えてくれる。
「圭介の父です。疲れてないかな?」
「あ、はいっ!松下美海と申します。迎えに来ていただいてありがとうございます。」
「いいんだよ。むしろみんなには怒られてしまってね。お父さんだけずるいーってね。」
「はいはい、長い話は乗ってから。美海、乗って。」
「あ、はい。あの、お願いします。」
「うん。安全運転でいくよー。」
終始にこにこしている圭介の父に、美海はほっとした。特に怖い人を想像していたわけではないが、こうして面と向かって歓迎してもらえると、やはり安心する。
「思っていたよりもずっとべっぴんさんだねぇ、美海さんは。」
「そ、そんなことっ…。」
「春姉がすごく言いふらしたってことがよくわかる。」
「小春はすごかったぞー。帰ってくるなり、圭介に彼女がいたって大騒ぎ。」
「いつになったらあの人は人間として落ち着くんだろう。」
「圭介は年の割に落ち着きすぎだ。なぁ、そう思うだろう、美海さん?」
「えっと…あの…私も…ちゃんと落ち着きたいので…圭介くんを見習おうと…。」
「えーそうかぁ、美海さんの目に圭介はそう映るのか。父さんとしては美海さんには初々しいままでいてほしいけどなぁ。」
「また好き勝手なことを。」
車の中で繰り広げられるテンポの良い会話に、浅井家の仲の良さを感じる。そして心配になる。自分の異質さが浮き彫りにならないか、と。
「はい、到着だよ。母さん、美海さんが来てくれたよ。」
「…美海美海って、俺もいますけど。」
『まるでおまけみたいだな』と呆れ顔で言う圭介を見つめると、何とも言えない気持ちになった。
(…そんな風に扱ってもらえるのは、ちゃんと関係ができてるからですよ…って言いたくなっちゃう。)
おまけなんかではない。圭介ありきの美海というお客さんだ。一人暮らしをしている圭介が戻ってきたときにすっと溶け込める場所がちゃんとある。だからこそ、美海もこうして受け入れてもらえる。
「あらー美海ちゃん!はじめまして。圭介の母です。長旅で疲れたでしょう?お茶淹れるわね。ほら圭介、美海ちゃんの荷物運んで!」
「そのつもり。美海、あがってて。」
「荷物、運びます!」
「いいのよー力仕事なんて圭介がやれば。美海ちゃんはせっかく来たんだし、お話しましょう!」
押しの強い圭介の母に腕を引かれてしまっては抵抗のしようがない。美海は腕を引かれるままについていった。