10回目のキスの仕方
「よーしっ!じゃあ圭ちゃんが帰ってくるまで、美海ちゃんには秘蔵の圭ちゃん見せてあげる。」
「え…?」
「あーいいなーあたしも!」
「よしっ!日和もおいで。」

 小春に手招きされて連れていかれたのは、圭介の部屋だった。

「圭ちゃんの部屋。卒アルとかちゃーんと本棚にしまってあるタイプの男子だから、圭ちゃんって。」

 と小春が言った通り、部屋の中で一番の存在感を放つ大きな本棚に卒業アルバムが3冊入っていた。

「あ、春姉、うちのアルバムも持ってきていい?圭ちゃんの幼稚園の頃の写真とかあるよ!」
「うわーいいねいいね!日和、持ってきて。」
「はーい!」

 ペラペラとめくられていく卒業アルバム。これは小学生のときのものだ。

「あ、いた!圭ちゃん!しかめっ面~!」
「…あ、本当ですね…しかめっ面…、でも…。」
「可愛いねぇ…。」
「はいっ!」

 今と大きく変わるところはないが、面差しは幼く、背もあまり高くなかったようだ。どちらかと言えば小さい方に入っていたことは運動会の写真からわかる。

「そうだー圭ちゃんって小さかったのよ、小学生の頃。でも今じゃあれじゃない?男の子って化けるわよねー。」
「春姉!持ってきたー!」
「それ何歳のやつ?」
「あたしが生まれた頃だから…圭ちゃんは2歳かなー。」
「ひゃー若い!」

 小春も日和も完全に面白がっている。美海はというと、初めて見る圭介がたくさんいて、頬が緩みっぱなしだった。

「楽しい?」
「は、はいっ!どの圭介くんも…とっても可愛いです。」
「今じゃ仏頂面男だけどねー。」
「ねー。圭ちゃんって本当に残念。」
「そんなこと…。」
「ないよね、美海ちゃんの前じゃ。」
「えっ、そうなの?ってかそこの話が聞きたい!」
「…美海ちゃんの前じゃあいつ、仏頂面どころか、すっごい優しく笑ってる。ね?」

 美海は恥ずかしくなって顔が上げられなくなってしまった。しかし、否定もできなくて視線を下げたままこくんと頷いた。
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