10回目のキスの仕方
「なーるほど。なんとなーく見えた圭ちゃんと美海ちゃんの壁はそれかぁ。」
「壁?」
「…そんな風に、見えましたか?」
「なんとなーくだけど。というか、そういう人間関係を専門としてるからね、仕事上。」
「どういったお仕事をされてるんですか?」
「市の教育センターの、不登校児童生徒対応。」
小春の口からさらりと出た言葉の全てを一度に理解することは美海にはできなかった。それでも不登校という言葉の意味ならば知っている。
「だからね、人の心の機微には敏感よ?」
「…そう、ですか…。」
そのような人に、自分は圭介に壁を作っていると感じられてしまうのだから、おそらく本当にそういったものを作っているのだろうと思う。しかも、無意識的に。
「圭ちゃんの何かが不満なの?」
「そんなことっ…ありません…圭介くんに不満なんて…。」
「そうだよねー。圭ちゃん、声荒げて怒ったりしないし、結構きちんとしてるし、そんなに悪いとこないよね?」
日和が口を挟んだ。やはり、どれだけ憎まれ口を叩こうと、圭介は家族にきちんと好かれている。
「日和さんの…おっしゃる通りです。むしろダメなところは圭介くんにではなく…私にあります。」
「どうして美海ちゃんはそう考えるの?何か思い当たる節はある?」
思い当たるところならば、ある。ただ、こんなことを言って嫌われてしまわないだろうか。
「…美海ちゃん?」
「…こんなことを思う自分が…多分間違っているんだと…思います。」
「…わかった。じゃあその体でいこう。美海ちゃんは間違っている。だから何言っても大丈夫。」
不思議と、小春の言葉は静かに美海の心にすっと入ってくる。素直に言っても良いのだ、という気持ちにさせてくれる。美海はゆっくりと口を開いた。
「基本的に人を…信用できないのかな…って、最近思っています。」
「ほーぉ、なるほど。」
口にすると、それはとても酷いことのように思える。しかし、小春は酷いとも言わずに受け止めてくれる。
「それはあたしたちはもちろん、圭ちゃんもってこと?」
すぐに頷くことはできなかった。しかし、否定もできなかった。
「…信じたい気持ちは…あるのに。」
「なるほどー。そこに素直な美海ちゃんがいたかー。」
小春はベッドの上から美海の頭に手を伸ばした。頭の撫で方は圭介と同じだ。
「話してくれてありがとう。もうちょっと聞きたいところだけど、あたしの思考も弱ってきてるし今日はこの辺にしよっか。」
「…すみ、ません。」
「いーのいーの。あたしが知りたくて首突っ込んだんだからさ。」
薄暗い中でも、小さく笑った小春に美海は安堵して瞳を閉じた。
「壁?」
「…そんな風に、見えましたか?」
「なんとなーくだけど。というか、そういう人間関係を専門としてるからね、仕事上。」
「どういったお仕事をされてるんですか?」
「市の教育センターの、不登校児童生徒対応。」
小春の口からさらりと出た言葉の全てを一度に理解することは美海にはできなかった。それでも不登校という言葉の意味ならば知っている。
「だからね、人の心の機微には敏感よ?」
「…そう、ですか…。」
そのような人に、自分は圭介に壁を作っていると感じられてしまうのだから、おそらく本当にそういったものを作っているのだろうと思う。しかも、無意識的に。
「圭ちゃんの何かが不満なの?」
「そんなことっ…ありません…圭介くんに不満なんて…。」
「そうだよねー。圭ちゃん、声荒げて怒ったりしないし、結構きちんとしてるし、そんなに悪いとこないよね?」
日和が口を挟んだ。やはり、どれだけ憎まれ口を叩こうと、圭介は家族にきちんと好かれている。
「日和さんの…おっしゃる通りです。むしろダメなところは圭介くんにではなく…私にあります。」
「どうして美海ちゃんはそう考えるの?何か思い当たる節はある?」
思い当たるところならば、ある。ただ、こんなことを言って嫌われてしまわないだろうか。
「…美海ちゃん?」
「…こんなことを思う自分が…多分間違っているんだと…思います。」
「…わかった。じゃあその体でいこう。美海ちゃんは間違っている。だから何言っても大丈夫。」
不思議と、小春の言葉は静かに美海の心にすっと入ってくる。素直に言っても良いのだ、という気持ちにさせてくれる。美海はゆっくりと口を開いた。
「基本的に人を…信用できないのかな…って、最近思っています。」
「ほーぉ、なるほど。」
口にすると、それはとても酷いことのように思える。しかし、小春は酷いとも言わずに受け止めてくれる。
「それはあたしたちはもちろん、圭ちゃんもってこと?」
すぐに頷くことはできなかった。しかし、否定もできなかった。
「…信じたい気持ちは…あるのに。」
「なるほどー。そこに素直な美海ちゃんがいたかー。」
小春はベッドの上から美海の頭に手を伸ばした。頭の撫で方は圭介と同じだ。
「話してくれてありがとう。もうちょっと聞きたいところだけど、あたしの思考も弱ってきてるし今日はこの辺にしよっか。」
「…すみ、ません。」
「いーのいーの。あたしが知りたくて首突っ込んだんだからさ。」
薄暗い中でも、小さく笑った小春に美海は安堵して瞳を閉じた。