10回目のキスの仕方
* * *

「お待たせしました!」
「うわー美海さん可愛い!」
「えっと…あの、ありがとうございます。」
「圭ちゃんも一緒に行くの?」
「バス停までは一緒。」
「今日の美海さん、めちゃめちゃ可愛いよね、圭ちゃん?」

 美海の水色のワンピースがふわりと風に揺れた。美海の頬は熱い。

「うん。」

 とても短い言葉に託された優しさがくすぐったくて、そしてとても嬉しい。自然と笑顔になっていたらしい頬に、日和の指が触れた。

「へへー美海さん、とっても可愛い!」
「ひ、日和さんが…可愛いです。」
「バス、乗り遅れるよ。」
「あ、はいっ!」

 バス停まで徒歩5分。圭介はもう少し真っ直ぐ進むため、ここで分かれる。

「気をつけて。あんまり日和が我儘だったら連絡して。」
「はぁー圭ちゃん、過保護すぎなんですけど?」
「大丈夫ですよ!ね、日和さん。」
「そーそー!」
「あ、でも…圭介くん。」
「ん?」
「…あの、気を付けてくださいね。怪我とか…しないように。」
「あー…うん。大丈夫。」
「圭ちゃん器用だし、だいじょーぶ!じゃ、行こう。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「圭介くんも、行ってらっしゃい。」
「うん。」

 丁度バスがやってきた。美海と日和はゆっくりとバスに乗り込んだ。圭介の背中が遠ざかっていった。

「案外圭ちゃんと美海さん、ラブラブ?」
「へっ!?ら、ラブラブ…!?」
「昨日ね、美海さんが人を信用できないみたいなこと言ってたでしょ?でもね、なんかそんなこと全然ないって感じ。」
「そう…ですか?」
「うん。美海さんがそう思ってるだけで、圭ちゃんのこと心配してる美海さんは普通にちゃんと彼女だなって。あ、なんかこれは失礼かもしれないけど。」
「い、いえっ…そんなこと…ないです。」

 『普通にちゃんと彼女』になれているのだろうか。気持ちはきちんと、向いているのだろうか。
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