10回目のキスの仕方
* * *

 圭介から貰ったヨーグルトとサラダを食べ終えて、タッパーウェアを洗う。さすがに洗ったものだけを返すというのも忍びないと思い、何か入れようかと考える。しかし、何も思いつかない。それもそのはずだ。そもそも美海は圭介のことを何も知らない。

(…相手を知らないって困る!何をあげたらいいのか見当もつかない!)

 こういう時に頼るべきは明季だ。スマートフォンを探して、ラインで連絡を入れた。バイトはなかったようで、すぐに既読のサインが出る。

『明季ちゃん!忙しかったらごめんね。アロエヨーグルトと梅ドレッシングのサラダのお礼に何をあげたら良い?』
『ごめん、意味がわからない。』
『昨日、私酔っ払ってて、帰るときに男の人に送ってもらったんだけど、その人が朝、私にアロエヨーグルトとサラダをくれたの。タッパーを返すときに一緒にお返しもしたいなって思ったんだけど、でも、何をあげたらいいか全然思いつかなくて。』
『はぁ!?!?なに!?なんで男!?もう彼氏できたの!?』
『全然違うよ!』
『意味わかんないから、今から明季の家行くわ。』
『片付けるよ!』

 明季の家から美海の家までは自転車で10分くらいの距離にある。あれだけ早い返信だったということは明季は家にいるということだろう。美海は慌てて片付けた。そして本当に10分後に明季は息を切らしてやってきた。

「美海!全部詳しく話してもらうから!てゆーかそいつ誰よ!」
「…あ、明季ちゃん、落ち着いて!」
「だってよりによってなんで美海!?歓迎会で何があったの!?」
「何って…私も酔っててあんまり覚えてなくて、それを浅井さんが…。」
「浅井…?」
「明季ちゃん、知ってる人?」
「んー…ちょっと待ってよ…聞いたことはあるような…。」
「思い出してくれると嬉しい!」
「浅井って人がどうしたのよ?」
「…話せば長くなるんだけど。」
「それを聞きにきたんだから。」
「…そっか。」

 そしてたっぷりと時間をかけて美海は明季に説明をした。明季の顔がにやついていくのを感じながら。
< 14 / 234 >

この作品をシェア

pagetop