10回目のキスの仕方
「…今は違いますよ。」
「…知ってるけど。」
「…ありがとうございます。あったかい…。」
「…いいよ、続けて。」
「はい。」
腕の中で小さく頷いた。
「…無視される私を見ていた明季ちゃんが、言ったんです。『そういうことはやめたら?見てて意味がわかんないし、胸糞悪い』って。」
「胸糞悪いなんて言葉、美海の口から聞くと斬新。」
「…衝撃的でしたよ。教室中が凍りつきました。リーダー格の女の子がやたら怒っていましたけど、何を言われても明季ちゃんは顔色一つ変えなかった。」
「…強いなぁ、神崎さん。」
「その日、思い切って話しかけました。感謝の気持ちは伝えないとと思ったので。そして言われた言葉は『嘘くさい笑い』ですよ。びっくりしました。ありがとうの返事がそれですから。」
「…それがびっくりだけで済んでる方が変じゃないの。」
「え、そ、そうですか!?」
「まぁいいや。それで?」
「えっとそれで、その時にもっと色々言われたんです。へらへらするなとか、嫌なことはもっとちゃんと嫌がれとか…その一つ一つの言い方は厳しいんですけど、中身はとても真っ当で、あぁ、私はこういう感情を失くしちゃってたんだなって思いました。明季ちゃんと会話するのは苦しくなかったんです。」
きゅっと強く抱きしめられる。
「それからですかね。クラスの中で明季ちゃんに庇われたことによって私も孤立し、…と言っても元々馴染んでいたわけでもなかったので、孤立は元々していたのかもしれませんが、とにかく変な二人だと思われ、ペアで何かをやるときには必然的に一緒になりました。1年生の頃は特に深い話をしたわけではありませんでしたが、高2の夏、明季ちゃんが顔に大怪我をして登校してきたことがあったんです。」
あの日の明季の纏う空気は冷たくて重かったのを思い出す。
「明季ちゃんが大怪我していたのでさすがに大きな声が出ました。駆け寄ったのを覚えています。でもとても小さな声で『近寄らないで』と言われました。それを振り切って、私は明季ちゃんの腕をとって保健室に連れていきました。」
「…男前。」
「あの時は必死でしたから。で、保健室で色々聞かれましたが、明季ちゃんは何も答えなかったんです。ただ黙って治療を施されていました。ひとしきり終わると、明季ちゃんがすっと立ち上がったので私は思わず腕を掴みました。いなくなってしまいそうな気がしたんです。」
「そこで掴んでなかったら、今の二人じゃないわけだ。」
「…もしかしたら、そうかもしれません。」
「…知ってるけど。」
「…ありがとうございます。あったかい…。」
「…いいよ、続けて。」
「はい。」
腕の中で小さく頷いた。
「…無視される私を見ていた明季ちゃんが、言ったんです。『そういうことはやめたら?見てて意味がわかんないし、胸糞悪い』って。」
「胸糞悪いなんて言葉、美海の口から聞くと斬新。」
「…衝撃的でしたよ。教室中が凍りつきました。リーダー格の女の子がやたら怒っていましたけど、何を言われても明季ちゃんは顔色一つ変えなかった。」
「…強いなぁ、神崎さん。」
「その日、思い切って話しかけました。感謝の気持ちは伝えないとと思ったので。そして言われた言葉は『嘘くさい笑い』ですよ。びっくりしました。ありがとうの返事がそれですから。」
「…それがびっくりだけで済んでる方が変じゃないの。」
「え、そ、そうですか!?」
「まぁいいや。それで?」
「えっとそれで、その時にもっと色々言われたんです。へらへらするなとか、嫌なことはもっとちゃんと嫌がれとか…その一つ一つの言い方は厳しいんですけど、中身はとても真っ当で、あぁ、私はこういう感情を失くしちゃってたんだなって思いました。明季ちゃんと会話するのは苦しくなかったんです。」
きゅっと強く抱きしめられる。
「それからですかね。クラスの中で明季ちゃんに庇われたことによって私も孤立し、…と言っても元々馴染んでいたわけでもなかったので、孤立は元々していたのかもしれませんが、とにかく変な二人だと思われ、ペアで何かをやるときには必然的に一緒になりました。1年生の頃は特に深い話をしたわけではありませんでしたが、高2の夏、明季ちゃんが顔に大怪我をして登校してきたことがあったんです。」
あの日の明季の纏う空気は冷たくて重かったのを思い出す。
「明季ちゃんが大怪我していたのでさすがに大きな声が出ました。駆け寄ったのを覚えています。でもとても小さな声で『近寄らないで』と言われました。それを振り切って、私は明季ちゃんの腕をとって保健室に連れていきました。」
「…男前。」
「あの時は必死でしたから。で、保健室で色々聞かれましたが、明季ちゃんは何も答えなかったんです。ただ黙って治療を施されていました。ひとしきり終わると、明季ちゃんがすっと立ち上がったので私は思わず腕を掴みました。いなくなってしまいそうな気がしたんです。」
「そこで掴んでなかったら、今の二人じゃないわけだ。」
「…もしかしたら、そうかもしれません。」