10回目のキスの仕方
* * *
駅前を離れると、人もまばらだった。お互いの吐く息が白く染まるこの季節の空気は嫌いじゃないが、今日だけは妙に息苦しい。明季の家の近くの公園まで来た。そろそろ言わなくては、明季の家の目の前で告白する羽目になる。
「明季。」
「なーに?」
「あのさ…。」
「うん。」
黙って手を引かれている明季が、この上なく可愛く見えて仕方がない。病気だとわかっている。きっと圭介もこんな気持ちなのだろうかと思うと、男は本当に単純極まりない生き物だと言うしかない。
「…付き合ってって言ったら、困る?」
「どこに付き合えばいいの?予定なければ全然付き合うけど…。」
「そうじゃなくて。付き合うの意味が違う。」
「意味が違う…?」
明季の表情が少し固まった。少しは察してくれたようだ。ただ、それは必ずしも喜ばしいものではない。
「明季。…俺と付き合ってほしい。」
「な…んで…。」
握り返されていた手から力が抜けた。明季の声が震えている。
「なんでって理由を訊かれたら色々答えるけど…でも一番は、理由なく傍にいたいって思うから。」
「突然…どうしちゃったの?だって今までそんな素振りなかったし…。」
「いや…出してたけど、明季には全然伝わってないのはわかってたし。だから言うつもりも…もっと前はなかったんだけど。」
「じゃあ…なんで今更…。」
なんで今更、と言われると辛い。だが、気になって踏み出したいと思ってしまったからだという答えは、明季の問いに対して誠実な返しになっているのだろうか。なっていなかったとしても、今返せる言葉はきっとこれしかない。
「…明季へのプレゼントを考えるにあたって、松下さんに相談したんだけど、…その時色々話を聞いて。」
「美海に話を聞いた?」
「時々、気になってた。話をすることが増えたのは今年からだったけど、…実は最初から気にして目では追ってた。松下さんと話してるとき、楽しそうなんだけど…時々悲しそうな顔するんだよ。」
「……。」
俯く明季に、ただ想いをぶつけていくことが正しいとは思っていない。それでも、もう引けない。
駅前を離れると、人もまばらだった。お互いの吐く息が白く染まるこの季節の空気は嫌いじゃないが、今日だけは妙に息苦しい。明季の家の近くの公園まで来た。そろそろ言わなくては、明季の家の目の前で告白する羽目になる。
「明季。」
「なーに?」
「あのさ…。」
「うん。」
黙って手を引かれている明季が、この上なく可愛く見えて仕方がない。病気だとわかっている。きっと圭介もこんな気持ちなのだろうかと思うと、男は本当に単純極まりない生き物だと言うしかない。
「…付き合ってって言ったら、困る?」
「どこに付き合えばいいの?予定なければ全然付き合うけど…。」
「そうじゃなくて。付き合うの意味が違う。」
「意味が違う…?」
明季の表情が少し固まった。少しは察してくれたようだ。ただ、それは必ずしも喜ばしいものではない。
「明季。…俺と付き合ってほしい。」
「な…んで…。」
握り返されていた手から力が抜けた。明季の声が震えている。
「なんでって理由を訊かれたら色々答えるけど…でも一番は、理由なく傍にいたいって思うから。」
「突然…どうしちゃったの?だって今までそんな素振りなかったし…。」
「いや…出してたけど、明季には全然伝わってないのはわかってたし。だから言うつもりも…もっと前はなかったんだけど。」
「じゃあ…なんで今更…。」
なんで今更、と言われると辛い。だが、気になって踏み出したいと思ってしまったからだという答えは、明季の問いに対して誠実な返しになっているのだろうか。なっていなかったとしても、今返せる言葉はきっとこれしかない。
「…明季へのプレゼントを考えるにあたって、松下さんに相談したんだけど、…その時色々話を聞いて。」
「美海に話を聞いた?」
「時々、気になってた。話をすることが増えたのは今年からだったけど、…実は最初から気にして目では追ってた。松下さんと話してるとき、楽しそうなんだけど…時々悲しそうな顔するんだよ。」
「……。」
俯く明季に、ただ想いをぶつけていくことが正しいとは思っていない。それでも、もう引けない。