10回目のキスの仕方
「…お願い。優しくしないで…。」
洋一の背中にしがみつきながら発した言葉。言葉と行動が噛み合っていない。
「そのお願いは聞けない。」
強く強く、抱き締められる。痛いくらいに。でも、苦しくはない。涙が止まらない。
「…だめだよ…あたしじゃ。あんたは…いい奴だから…」
「いい奴だからとか、生殺しにも程あるだろ。」
「何が…生殺し…?」
「いい人止まりってことだろ。 いい奴じゃなくていいから、こうやってんのを怒られない奴になりたいんだけど。」
洋一が言わんとしていることはわかる。そして、こうしてすがって泣いている時点で、そこまで拒絶できない自分もわかる。それでも、遠ざけねばならない。甘えてはいけない。洋一の幸せを願うなら、尚更だ。
「…だめ。」
「なんで。」
「…普通の女の子と楽しく恋愛してほしいって…本気で思うもん…。本当に…付き合い良くて…優しい…から…。」
自分の隣にいた洋一は優しかった。それは自分にだけ向けられるものじゃなかったからこそ心地よくて、安心していた。嫌いで突き放すわけじゃない。自分の隣に洋一が相応しくないのではない。洋一の隣に自分が相応しくない。
「…なんでそこで、普通の女が出てくるんだよ。そんなに嫌われてんの、俺。」
「…嫌いじゃ…ないよ…嫌いなわけ…ないじゃん。だからだよ…だから嫌なの、あたしじゃない…。」
「嫌いじゃねーなら、それでいいよ。」
「何が…。」
「明季が俺を嫌いじゃねーなら、…とりあえず傍に置いといて。必要な時だけ使ってくれればいい。」
「…そんな都合の良いこと…。」
「それでいいっつってんだから…黙って甘えとけ。」
ぐるりと身体を回され、正面からぎゅっと抱きしめられる。頭を撫でる手が優しくて、さらに涙が出た。
「離して…。」
「嫌。」
「…服、汚しちゃう…。」
「いいよ。思う存分汚してくれ。」
「…バカ…。」
涙が零れて、溢れて、また零れていく。泣けば泣くほど、洋一のコートに染みができた。
洋一の背中にしがみつきながら発した言葉。言葉と行動が噛み合っていない。
「そのお願いは聞けない。」
強く強く、抱き締められる。痛いくらいに。でも、苦しくはない。涙が止まらない。
「…だめだよ…あたしじゃ。あんたは…いい奴だから…」
「いい奴だからとか、生殺しにも程あるだろ。」
「何が…生殺し…?」
「いい人止まりってことだろ。 いい奴じゃなくていいから、こうやってんのを怒られない奴になりたいんだけど。」
洋一が言わんとしていることはわかる。そして、こうしてすがって泣いている時点で、そこまで拒絶できない自分もわかる。それでも、遠ざけねばならない。甘えてはいけない。洋一の幸せを願うなら、尚更だ。
「…だめ。」
「なんで。」
「…普通の女の子と楽しく恋愛してほしいって…本気で思うもん…。本当に…付き合い良くて…優しい…から…。」
自分の隣にいた洋一は優しかった。それは自分にだけ向けられるものじゃなかったからこそ心地よくて、安心していた。嫌いで突き放すわけじゃない。自分の隣に洋一が相応しくないのではない。洋一の隣に自分が相応しくない。
「…なんでそこで、普通の女が出てくるんだよ。そんなに嫌われてんの、俺。」
「…嫌いじゃ…ないよ…嫌いなわけ…ないじゃん。だからだよ…だから嫌なの、あたしじゃない…。」
「嫌いじゃねーなら、それでいいよ。」
「何が…。」
「明季が俺を嫌いじゃねーなら、…とりあえず傍に置いといて。必要な時だけ使ってくれればいい。」
「…そんな都合の良いこと…。」
「それでいいっつってんだから…黙って甘えとけ。」
ぐるりと身体を回され、正面からぎゅっと抱きしめられる。頭を撫でる手が優しくて、さらに涙が出た。
「離して…。」
「嫌。」
「…服、汚しちゃう…。」
「いいよ。思う存分汚してくれ。」
「…バカ…。」
涙が零れて、溢れて、また零れていく。泣けば泣くほど、洋一のコートに染みができた。