10回目のキスの仕方
* * *
「みうちゃんだー!」
「え、どこ…あ、美海ちゃん!」
長いと記憶していたこげ茶色の髪が短くなっていて一瞬わからなかったが、顔はかわっていない。それは弟の方もだった。元気な走りで近付いてくる空人は、美海の記憶の中の空人とは少し違っていた。
「…お母さん、空人…くん。」
「美海ちゃん!お帰りなさい!」
「みうちゃん!」
足元でぴょんぴょん飛び跳ねる空人の視線に合わせるために美海が屈むと、空人はぎゅっと抱き付いてきた。
「みうちゃん!おかえりなさい!」
「…ただいま。」
とても素直に出てきた言葉だった。小さい腕が自分を抱きしめるこの感覚が、もっと自分に馴染まないと思っていた。しかし、そんなのは全くの見当違いだった。
「はじめまして。浅井圭介と申します。」
「あ…圭介くん!ごめんなさいね、前の電話では…。」
「いえ。不審がられても仕方がないです。」
「このおっきいおにいちゃん、だれー?」
「この人は美海ちゃんの恋人よコ・イ・ビ・ト!」
「おおおお母さん!そんなこと空人くんに…。」
「へぇーこいびとなんだぁ。ぼくもすきなこいるよ?」
「へっ!?」
「最近の子供ってマセガキよねー。さて、外は寒いし早く車に乗って。お父さんも待ってるわよ。」
「お世話になります。」
「そんなにかしこまらなくていいのよ。何て言ったって、圭介くんは未来のお婿さんですからね。」
「っ…!」
母の言葉に美海の顔は真っ赤に染まった。寒さなんて全く気にならない。熱い。
「みうちゃん、ほっぺまっかー。りんごたべたの?」
「た…食べてない…よ…。」
「本当のことでしょ、ね?美海ちゃん。」
2年の空白を全く感じさせないように振る舞ってくれているこの優しさに涙が出そうだった。こんなにも当たり前みたいに流れていく空気を感じることができなかったのは、家族のせいじゃなかったのかもしれない。いや、おそらくはそうなのだろう。家族のせいだと決めつけて、閉ざしていた自分のせいだったのだと今なら気付ける。
「みうちゃんだー!」
「え、どこ…あ、美海ちゃん!」
長いと記憶していたこげ茶色の髪が短くなっていて一瞬わからなかったが、顔はかわっていない。それは弟の方もだった。元気な走りで近付いてくる空人は、美海の記憶の中の空人とは少し違っていた。
「…お母さん、空人…くん。」
「美海ちゃん!お帰りなさい!」
「みうちゃん!」
足元でぴょんぴょん飛び跳ねる空人の視線に合わせるために美海が屈むと、空人はぎゅっと抱き付いてきた。
「みうちゃん!おかえりなさい!」
「…ただいま。」
とても素直に出てきた言葉だった。小さい腕が自分を抱きしめるこの感覚が、もっと自分に馴染まないと思っていた。しかし、そんなのは全くの見当違いだった。
「はじめまして。浅井圭介と申します。」
「あ…圭介くん!ごめんなさいね、前の電話では…。」
「いえ。不審がられても仕方がないです。」
「このおっきいおにいちゃん、だれー?」
「この人は美海ちゃんの恋人よコ・イ・ビ・ト!」
「おおおお母さん!そんなこと空人くんに…。」
「へぇーこいびとなんだぁ。ぼくもすきなこいるよ?」
「へっ!?」
「最近の子供ってマセガキよねー。さて、外は寒いし早く車に乗って。お父さんも待ってるわよ。」
「お世話になります。」
「そんなにかしこまらなくていいのよ。何て言ったって、圭介くんは未来のお婿さんですからね。」
「っ…!」
母の言葉に美海の顔は真っ赤に染まった。寒さなんて全く気にならない。熱い。
「みうちゃん、ほっぺまっかー。りんごたべたの?」
「た…食べてない…よ…。」
「本当のことでしょ、ね?美海ちゃん。」
2年の空白を全く感じさせないように振る舞ってくれているこの優しさに涙が出そうだった。こんなにも当たり前みたいに流れていく空気を感じることができなかったのは、家族のせいじゃなかったのかもしれない。いや、おそらくはそうなのだろう。家族のせいだと決めつけて、閉ざしていた自分のせいだったのだと今なら気付ける。