10回目のキスの仕方
* * *

「あらー美海ちゃんから手紙?」
「ああ。ほとんどノロケ話だよ。」
「いいじゃないの。孫の顔が見れるわよ?」
「まだ孫なんて早いよ。」
「おとうさんとおかあさん、おじいちゃんとおばあちゃんになるの?」
「あーら空人、頭いいわねぇ。そうよー?その日はそんなに遠くないわね。」
「まだだよまだ。」
「あらなによー。美海ちゃんが幸せになるのを阻止する気?」
「そうじゃないけど、…でも、まだ早い。」
「早くないわよ。だって指輪よ、指輪。」

 顔をしかめる父、その横でにやっと笑う母。こんな風に手紙を読まれていることを、まだ美海は知らない。

「あ、でもねぇ、この前圭介くんと話していて、なんだかあなたにそっくりだなって思ったわよ、私。」
「圭介くんと僕がかい?」
「ええ。顔はもちろん似ていないけど、美海ちゃんへの眼差しとか。態度とか…在り方みたいなものが。」
「そうか…。」
「娘が自分に似た男の子を追いかけてくれるって、ちょっと嬉しいわね。」

 そう言って母は笑った。その笑顔につられて父も笑う。

「指輪を全額払ってもらわなかったところが美海ちゃんらしいわね。それを引け目に感じちゃうところとか。」
「それでおもてなし、か。」
「みんなで旅行にでも行きましょうか。もちろん部屋は美海ちゃんと圭介くんの二人だけにしてあげるけど。」
「しません。」
「えぇー!旅館とかだったら浴衣でしょ?テンション上がっちゃうわね!」
「絶対だめ。」
「つまんなーい!ね、空人。美海ちゃんと圭介くんがラブラブしてた方が楽しいわよね?」
「うん!みうちゃんがわらってるほうがすきー。」
「お母さんもそっちの方が好きなのに、お父さんは違うんだってー。」
「え、そうなの?」
「違う…わけではない…けど…。」
「よーし!じゃあ温泉旅行はって美海ちゃんに提案の電話を入れなきゃね!」
「ちょっ…ま…!」
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