10回目のキスの仕方
「…嫌じゃ…ない、し。」
「…それを早く言えよバーカ。」
「…なんで嫌じゃないの、…あたし。」
「ほんっとにバカだなお前。」
「ば、バカにバカって言われたくない!」
「そんなのお前な…お前が俺を好きで、…お前が俺を好きだからに決まってんだろバカ。」
「は、はぁっ!?そんなことあるわけ…!」
「お前の口は全然正直じゃねーけどな、お前の心臓は正直。」

 ドクンドクンと壊れるんじゃないかと思うくらいに速く脈打つ。それは自分だけではなく、自分を抱きしめる晃成もだった。

「お前は軽率にどんな男にでもドキドキする女なのかよ。」
「んなわけないでしょ!」
「だったらそういうこと。」
「な…なんであたしが晃成なんかを…!」
「俺だってなんでお前なんか…って思うけど、…いや、思わねーな。思わない。」
「へっ?いきなり何言って…。」

 こんなに真面目に話そうとする晃成を、自分は知らない。生まれたときから一緒にいた相手だというのに、知らない顔があったなんて。
 ゆっくりと身体が離れ、視線が絡み合えば余計に顔の熱が上がって心拍数は増した。

「大体、お前みたいな女に付き合えんの、俺くらいなもんだから。」
「そ、そんなことないし!」
「そんなことあります。この我儘女。」
「わ、我儘だと思うなら離れてよ!」
「嫌。だってお前、我儘言える相手、俺くらいしかいねーじゃん。」
「圭ちゃんにも言えるもん!」
「はいはい。圭ちゃんはもう人のものですー。」
「し、知ってます!」
「だからお前も人のものになれ。」
「っ…。」

 こんなに真っ直ぐな瞳で晃成に見つめられたことなんてない。息が詰まって苦しい。苦しいけど、嫌ではない。
 圭介に恋をしていたときとは違う。それよりもずっと唐突で、それよりもずっとドキドキする。

「…急ぎじゃねーけど。…答えはバレンタインでいいよ。」
「急ぎじゃなくないじゃん!バレンタイン明後日!」
「今日を入れて3日も猶予与えてるし。それに、お前鏡見ろよ。」
「はぁ?」
「あれこれ考えるより、バレンタインにお前が何をすべきか一目瞭然だぞ。鏡見ろ。」
「っ…バカ!」
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