10回目のキスの仕方
* * *

「…な、なんでお布団…。」
「一組なんだろうね。二人泊まるって予約したんだろ?」
「その…はず…なんですけど…。」

 空人が眠くなったのを見て、それぞれが部屋に分かれることとなった。そしてこの衝撃の光景である。

「まぁ結構大きめだから寝れなくないけど、狭いかも。どうする?」
「どうするって…け、圭介くん、これで寝れますか?」
「…慣れれば。多分最初は無理。」
「わ、私なんか終日眠れなかったらどうしたら…。」
「その時はおんぶするよ。」
「そ、空人くんなら軽いですが私はだめです!」
「はいはい。…あのさ、美海が嫌じゃないなら同じ布団でいいよ、俺は。」

 その聞き方はずるいと美海は思う。嫌なはずは、ない。

「…嫌じゃ…ない、です。」
「寝よ。結構疲れた。」
「…はい。」

 一つの布団で眠ったことはある。しかし、美海の脳裏には女湯での会話が蘇っていた。

(な、ないない!圭介くんにそんな趣味はない!)

「美海?」
「へっ?」
「入んなよ。案外寒いし。」
「…は、い…。」

 掛け布団をあげてくれる圭介は余裕そうだ。真っ赤な自分が恥ずかしくなる。

「…おやすみ。」
「おやすみ、なさい。」

 美海が布団に入ったのを確認すると、圭介は美海にくるりと背を向けた。前に一緒に眠ったときは、こうじゃなかった。本当に疲れさせてしまったということだろうかと思うと、急に切なくなる。

「…圭介くん。」

 圭介の浴衣の背を引いた。
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