10回目のキスの仕方
「…寂しくない、は嘘になります。」
「え?」
「圭介くんが前に言ってたこともちゃんと理解しているつもりです。私の家族と過ごす時間を優先してくれるってとてもありがたいことだし、みんなも嬉しそうで…何も悪いことではないんですけど…。」
「うん。」
いつからこんなに自分勝手になったのだろう。甘えていいと思えた瞬間から、自分は随分欲張りになったと思う。楽しい、嬉しい、愛しい、…こんな感情の裏に、切ない、苦しい、寂しいがあったなんて圭介に出会わなければ知ることもなかったかもしれない。
「…ちょっと寂しいなって思ってしまいました。圭介くんと初めての旅行なのに、…手も繋げない、…とか。」
いいなと思ってしまった。空人が何の躊躇いもなく圭介の手を取ること。自分はいつだってできるのに、だ。
「…わがままで、勝手で…呆れられるようなことばっかり言ってますね。…ごめんなさい。」
圭介の目に自分の目を合わせることができない。恥ずかしさもあるが、自分の心の狭さに、どんな顔をしていいのかわからなくなる。
「…そういうのは、…歓迎できるわがままだよ。ごめん、全く気付かなかった。そう言われてみれば初めてか、旅行は。」
「お出かけはしてますけど、…旅行ってないですよね。」
「帰省くらいだもんな。…そこまで気が回ってなかった。正直、美海のお父さんとちゃんと話せるかとかそんなことばっかり考えてたし。」
「…お父さんですか?」
圭介が頭を掻いた。
「…美海のお父さんは、美海が大事で大事で仕方がないんだよ。それをこんなぽっと出の男なんかにくれるのかなとか、…まぁ色々。」
「…!」
圭介の言わんとすることが見えてきて、美海の頬は熱くなった。お風呂でしていた話は、きっとそれだ。
「いつかもらいに伺うって宣言した。」
「え…あ、…あの…。」
「待ってるって言ってくれたよ。まだくれないって言われたのも確かだけど。」
たまらなくなって、美海は圭介の胸にぎゅっと抱き付いた。優しい腕が抱き返してくれることを知っている。
「え?」
「圭介くんが前に言ってたこともちゃんと理解しているつもりです。私の家族と過ごす時間を優先してくれるってとてもありがたいことだし、みんなも嬉しそうで…何も悪いことではないんですけど…。」
「うん。」
いつからこんなに自分勝手になったのだろう。甘えていいと思えた瞬間から、自分は随分欲張りになったと思う。楽しい、嬉しい、愛しい、…こんな感情の裏に、切ない、苦しい、寂しいがあったなんて圭介に出会わなければ知ることもなかったかもしれない。
「…ちょっと寂しいなって思ってしまいました。圭介くんと初めての旅行なのに、…手も繋げない、…とか。」
いいなと思ってしまった。空人が何の躊躇いもなく圭介の手を取ること。自分はいつだってできるのに、だ。
「…わがままで、勝手で…呆れられるようなことばっかり言ってますね。…ごめんなさい。」
圭介の目に自分の目を合わせることができない。恥ずかしさもあるが、自分の心の狭さに、どんな顔をしていいのかわからなくなる。
「…そういうのは、…歓迎できるわがままだよ。ごめん、全く気付かなかった。そう言われてみれば初めてか、旅行は。」
「お出かけはしてますけど、…旅行ってないですよね。」
「帰省くらいだもんな。…そこまで気が回ってなかった。正直、美海のお父さんとちゃんと話せるかとかそんなことばっかり考えてたし。」
「…お父さんですか?」
圭介が頭を掻いた。
「…美海のお父さんは、美海が大事で大事で仕方がないんだよ。それをこんなぽっと出の男なんかにくれるのかなとか、…まぁ色々。」
「…!」
圭介の言わんとすることが見えてきて、美海の頬は熱くなった。お風呂でしていた話は、きっとそれだ。
「いつかもらいに伺うって宣言した。」
「え…あ、…あの…。」
「待ってるって言ってくれたよ。まだくれないって言われたのも確かだけど。」
たまらなくなって、美海は圭介の胸にぎゅっと抱き付いた。優しい腕が抱き返してくれることを知っている。