10回目のキスの仕方
「ごほっ…けほ…。」
びくっと圭介の身体が動く。こんな風に触れた矢先に目を覚まされてしまったらそれこそ気まずい。それなのに、伸ばした手から伝わる熱は優しくて温くて心地が良い。
「…子どもみたいだな…。」
兄の子ども、つまりは圭介の姪の髪質に似ているような気がする。柔らかくてどこまでも指が通る髪。どちらかと言えば長い方に入る美海の髪は、圭介が想像していたよりも柔らかくて、おまけに安らかな寝顔までつくと本当に子どものように見えてくる。
髪をそっとすくい上げ、その端に唇を落とした。衝動なのか、出来心なのかよくわからない。それでもゆっくりと唇を離した瞬間に上がった心拍数を感じて、頬が熱くなった。
(…こんなことをされたって知ったら、松下さんはどんな顔をするだろう…?)
顔が赤くなって、何も言えなくなって、もしかしたら自分が想像している以上にもっと色々な顔をするかもしれない。そんな顔も見てみたいと思うくらいには気になる相手であることはもう認めてしまった方が良い気もする。ただ、今自分が抱える想いを相手が同等に抱いているかについては多くの疑問が残るため、迂闊に距離を縮めることもすぐにはできないけれど。
「…可愛い。」
思えば、初めて出会った時から可愛かったと圭介は思う。しばらく忘れていた気持ちが呼び起こされるような不思議な感覚があった。いわゆる恋愛的な感情よりも先に、可愛い人だと思った。動きやひたむきさや、必死な様子、そのどれをとっても危なげで目が離せない、と思った。会話をしてみてもやはりそれは変わらなかった。そして今、不思議なくらい何の違和感もなく、美海の部屋で看病をしている。彼氏でもないのに、だ。
『圭ちゃん、あの人のことが好きなの?』
不意に蘇る玲菜の言葉。あの時も恋愛的な意味で付き合いたいとは思わなかった。今は、どうだろうか。
(…心配になる、のか。松下さんを見てると。)
自分の感情に何故そうなのかという問いをぶつけ続けても、よくわからないことが増えていくばかりだ。
「ん…。」
寝返りをうち、圭介に背を向けて眠る美海を見つめた。髪は今の寝返りでするりと手から落ちた。
びくっと圭介の身体が動く。こんな風に触れた矢先に目を覚まされてしまったらそれこそ気まずい。それなのに、伸ばした手から伝わる熱は優しくて温くて心地が良い。
「…子どもみたいだな…。」
兄の子ども、つまりは圭介の姪の髪質に似ているような気がする。柔らかくてどこまでも指が通る髪。どちらかと言えば長い方に入る美海の髪は、圭介が想像していたよりも柔らかくて、おまけに安らかな寝顔までつくと本当に子どものように見えてくる。
髪をそっとすくい上げ、その端に唇を落とした。衝動なのか、出来心なのかよくわからない。それでもゆっくりと唇を離した瞬間に上がった心拍数を感じて、頬が熱くなった。
(…こんなことをされたって知ったら、松下さんはどんな顔をするだろう…?)
顔が赤くなって、何も言えなくなって、もしかしたら自分が想像している以上にもっと色々な顔をするかもしれない。そんな顔も見てみたいと思うくらいには気になる相手であることはもう認めてしまった方が良い気もする。ただ、今自分が抱える想いを相手が同等に抱いているかについては多くの疑問が残るため、迂闊に距離を縮めることもすぐにはできないけれど。
「…可愛い。」
思えば、初めて出会った時から可愛かったと圭介は思う。しばらく忘れていた気持ちが呼び起こされるような不思議な感覚があった。いわゆる恋愛的な感情よりも先に、可愛い人だと思った。動きやひたむきさや、必死な様子、そのどれをとっても危なげで目が離せない、と思った。会話をしてみてもやはりそれは変わらなかった。そして今、不思議なくらい何の違和感もなく、美海の部屋で看病をしている。彼氏でもないのに、だ。
『圭ちゃん、あの人のことが好きなの?』
不意に蘇る玲菜の言葉。あの時も恋愛的な意味で付き合いたいとは思わなかった。今は、どうだろうか。
(…心配になる、のか。松下さんを見てると。)
自分の感情に何故そうなのかという問いをぶつけ続けても、よくわからないことが増えていくばかりだ。
「ん…。」
寝返りをうち、圭介に背を向けて眠る美海を見つめた。髪は今の寝返りでするりと手から落ちた。