10回目のキスの仕方
こんな風に大きな声を出して泣くなんて、いつもの美海なら絶対にしない。転んでしまったのも、こんな風に子どものように泣いているのも全てアルコールのせいなのだ。
「…なくならないっ!気持ち悪い感じも、怖さも、全部っ…!」
「うん。」
「…こわ…いよ…。」
「うん。」
「なしにしたいよ…。」
「うん。」
「…いや…だもん…。」
「そうだな。」
酔っぱらいの戯言に、ちゃんと相槌を打ってくれることに優しさを感じる。そして、美海の手を引く彼の手は怖くなんかない。それなのに身体の震えが収まらない。
一気にたくさん泣きすぎて鼻がつまってきた。鼻をすする音しか聞こえない。彼は口を閉じたままだ。
「ここの交差点、真っ直ぐ?」
美海は頷いた。彼の手がまた優しく美海の手を引く。
「ここ右?」
またしても頷く。美海の家から一番近いコンビニが見えてきた。
「で、どっち?」
「この小道を入ります。」
「…ってことは、もしかして、あれ?」
「はい…ひっく。」
美海の家は2階建てのアパートの2階、205号室である。
「2階?」
「…はい…ひっく。」
「じゃあ1階でまずは膝、消毒してやる。」
「え…?なんで1階…。」
「俺も同じアパートだから。」
「ふぇ…そ、そうなんですか…。」
泣き疲れたのとアルコールのせいで、段々眠くなってきていた。足元はさらに覚束なくなってきた。
「っ…きゃっ…!」
「危なっ…!」
ぐいっと手を引かれて転ばずには済んだものの、飛び込んだのは彼の胸だった。
「…ふぇ…あ、えっと…ごめんなさ…。」
「いいよ。酔っ払い、もうちょっとだけ頑張れ。」
「ふぁい。」
ふわふわする視界に、ふわふわする足。痛みなんか、もう感じない。
「…なくならないっ!気持ち悪い感じも、怖さも、全部っ…!」
「うん。」
「…こわ…いよ…。」
「うん。」
「なしにしたいよ…。」
「うん。」
「…いや…だもん…。」
「そうだな。」
酔っぱらいの戯言に、ちゃんと相槌を打ってくれることに優しさを感じる。そして、美海の手を引く彼の手は怖くなんかない。それなのに身体の震えが収まらない。
一気にたくさん泣きすぎて鼻がつまってきた。鼻をすする音しか聞こえない。彼は口を閉じたままだ。
「ここの交差点、真っ直ぐ?」
美海は頷いた。彼の手がまた優しく美海の手を引く。
「ここ右?」
またしても頷く。美海の家から一番近いコンビニが見えてきた。
「で、どっち?」
「この小道を入ります。」
「…ってことは、もしかして、あれ?」
「はい…ひっく。」
美海の家は2階建てのアパートの2階、205号室である。
「2階?」
「…はい…ひっく。」
「じゃあ1階でまずは膝、消毒してやる。」
「え…?なんで1階…。」
「俺も同じアパートだから。」
「ふぇ…そ、そうなんですか…。」
泣き疲れたのとアルコールのせいで、段々眠くなってきていた。足元はさらに覚束なくなってきた。
「っ…きゃっ…!」
「危なっ…!」
ぐいっと手を引かれて転ばずには済んだものの、飛び込んだのは彼の胸だった。
「…ふぇ…あ、えっと…ごめんなさ…。」
「いいよ。酔っ払い、もうちょっとだけ頑張れ。」
「ふぁい。」
ふわふわする視界に、ふわふわする足。痛みなんか、もう感じない。