10回目のキスの仕方
「理解…してもらえた?」
「言葉としては…もちろんわかるんですが…でも…浅井さんが…。」
「俺が?」
「本当…ですか?」
「…多分。」
「多分って!」
「…いや、恋愛経験豊富な方じゃないから。だから自分の気持ちも基本的にはよくわかってないけど、…でも、松下さんを好きなら納得ができるから。」
「…納得?」
圭介がどちらかといえば感情論的ではなく、論理的であることはわかっていたことだ。ただ自分を好きなら納得ができるなんて今までに言われたことは一度だってない。そのため、どんな風に返答すれば良いのかわからない。
「ストンと自分の中で落ちた。…上手く言えないけど。」
あまりにも言葉が足りない。そして度々圭介の口から出てくる『好き』という言葉に抵抗がありすぎて顔が熱くなってきた。
「…でもごめん。そんな風に困らせたくは…ない。常に。」
美海の頬まで伸びた圭介の手は、触れそうで触れずに下に落ちた。
「…どうかしてた。ごめん。いきなりすぎ…た。うん。」
「…謝らないで…ください。すみません…私…困った顔、ですか?」
「うん。今にも泣きそう。」
顔を上げて圭介と目を合わせると、圭介が口元を小さく緩めて笑顔を作っていた。これは自然と出てくる笑みではなくて、故意に作った笑顔だということが何となくわかる。そんな風にさせているのは自分自身だとわかればわかるほど、圭介の言葉通りに泣きそうだ。
漫画や小説の中のヒーローとヒロインは、自分たちのようではなかった。読んでいる側からすればまさに今というタイミングでされる告白やプロポーズ、そして待っていましたとばかりに応える相手。結末は間違いなく、真っ直ぐにハッピーエンドだ。しかし、現実は全く違う。予想できないタイミングで、考えてもいなかった言葉で、あまりにも唐突に爆弾を落としていく。
「…私じゃ…だめです、浅井さん。」
「何が?」
「お気持ち…とてもありがたいです。…あれだけ迷惑をかけた私を好きになってもらえて…もしかしたらこんな幸運なことはないかもしれません。でも…。」
圭介のことはもちろん嫌いじゃない。それでも、美海の答えは一つだ。
「…ごめんなさい。…その気持ちに応え…られません。」
向かい合う勇気がない。怖くてたまらないのだ。好きとか、嫌いとかそんな感情よりも先に、深入りすることが怖い。相手に問題があるのではない。問題は自分にしかない。そんな自分勝手で、相手を傷つける。結局いつだって自分のことしか大事ではない。
「言葉としては…もちろんわかるんですが…でも…浅井さんが…。」
「俺が?」
「本当…ですか?」
「…多分。」
「多分って!」
「…いや、恋愛経験豊富な方じゃないから。だから自分の気持ちも基本的にはよくわかってないけど、…でも、松下さんを好きなら納得ができるから。」
「…納得?」
圭介がどちらかといえば感情論的ではなく、論理的であることはわかっていたことだ。ただ自分を好きなら納得ができるなんて今までに言われたことは一度だってない。そのため、どんな風に返答すれば良いのかわからない。
「ストンと自分の中で落ちた。…上手く言えないけど。」
あまりにも言葉が足りない。そして度々圭介の口から出てくる『好き』という言葉に抵抗がありすぎて顔が熱くなってきた。
「…でもごめん。そんな風に困らせたくは…ない。常に。」
美海の頬まで伸びた圭介の手は、触れそうで触れずに下に落ちた。
「…どうかしてた。ごめん。いきなりすぎ…た。うん。」
「…謝らないで…ください。すみません…私…困った顔、ですか?」
「うん。今にも泣きそう。」
顔を上げて圭介と目を合わせると、圭介が口元を小さく緩めて笑顔を作っていた。これは自然と出てくる笑みではなくて、故意に作った笑顔だということが何となくわかる。そんな風にさせているのは自分自身だとわかればわかるほど、圭介の言葉通りに泣きそうだ。
漫画や小説の中のヒーローとヒロインは、自分たちのようではなかった。読んでいる側からすればまさに今というタイミングでされる告白やプロポーズ、そして待っていましたとばかりに応える相手。結末は間違いなく、真っ直ぐにハッピーエンドだ。しかし、現実は全く違う。予想できないタイミングで、考えてもいなかった言葉で、あまりにも唐突に爆弾を落としていく。
「…私じゃ…だめです、浅井さん。」
「何が?」
「お気持ち…とてもありがたいです。…あれだけ迷惑をかけた私を好きになってもらえて…もしかしたらこんな幸運なことはないかもしれません。でも…。」
圭介のことはもちろん嫌いじゃない。それでも、美海の答えは一つだ。
「…ごめんなさい。…その気持ちに応え…られません。」
向かい合う勇気がない。怖くてたまらないのだ。好きとか、嫌いとかそんな感情よりも先に、深入りすることが怖い。相手に問題があるのではない。問題は自分にしかない。そんな自分勝手で、相手を傷つける。結局いつだって自分のことしか大事ではない。