10回目のキスの仕方
「店長…見て、たんですか…?」
「まっさかー。でも、浅井さんと玲菜を見つめてる感じから、そういうことかなーって。美海ちゃんから告白するようには見えないし。まぁ、当てずっぽうなんだけど合ってた?」
当てずっぽうで言ったとは思えないほどに正確なのは、福島の持つ観察眼がそうさせるのだろう。美海は小さく頷いた。
「…まるで一緒にいた、みたいです。」
「のぞき見なんて悪趣味なことしないよ、私。」
「それは…もちろんです。」
「…浅井さん、だめ?」
「だめじゃ…ないです…。浅井さんがだめなんじゃなくて、私が…だめです。」
「美海ちゃんの何がだめ?」
「…迷惑をかけてばかりです。甘えてばかりです。それに…玲菜ちゃんより…。」
「玲菜ちゃん?」
するすると言葉にできてしまう自分に驚く。走り出した言葉は止まってくれない。だめな自分なら、どこまでだって言える気がする。
「あんなに強く人を想える自分を想像できない、です…。」
圭介と出会ってまだたったの4か月。交わした言葉の数も質も玲菜に遠く及ばない。そんな自分が、圭介に好きだと言うには足りないものが多すぎる。それに、好きかどうかもわからない。
「…アプローチという点においては劣るかもしれないけど、気持ちは比較しようがないんじゃないのかなぁ。」
「…今、そうは思えません。」
「そういうところは強いなぁ、美海ちゃん。」
その時、部屋のチャイムが鳴った。
「あーなんでこういう時にうちにくるのよあのバカは!」
クレーム客が来た時のような表情になって、福島が玄関先に出ていく。取り残された美海は、グラスに残っていたチューハイを飲み干した。
「お客さんいるから無理。帰って。」
「冷たい!終電逃して帰れなくなったから泊まるとこがない彼氏に対して酷い!」
「酷いのはいい年して終電を逃すバカだバカ。」
「お客さんって女の子?」
「あ…あの…私なら帰りま…。」
美海はリビングから出てそう言った。彼氏が来たのならば、どう考えてもいなくなるべきは自分だと思う。
「うわー可愛い子!噂の新人ちゃん?」
「う、噂…!?」
「余計なことを言わずにとにかく帰れ、このバカ男!」
「お邪魔しまーす!初めまして、大倉って言います。咲絵(サキエ)の彼氏です。」
「…ほんと、帰って。」
「帰りますっ…!」
「美海ちゃんは帰らなくていいの!むしろ泊まっていって!帰るのはこいつ。」
そんな福島の言葉を完璧に無視して、大倉は部屋に入ってきた。
「まっさかー。でも、浅井さんと玲菜を見つめてる感じから、そういうことかなーって。美海ちゃんから告白するようには見えないし。まぁ、当てずっぽうなんだけど合ってた?」
当てずっぽうで言ったとは思えないほどに正確なのは、福島の持つ観察眼がそうさせるのだろう。美海は小さく頷いた。
「…まるで一緒にいた、みたいです。」
「のぞき見なんて悪趣味なことしないよ、私。」
「それは…もちろんです。」
「…浅井さん、だめ?」
「だめじゃ…ないです…。浅井さんがだめなんじゃなくて、私が…だめです。」
「美海ちゃんの何がだめ?」
「…迷惑をかけてばかりです。甘えてばかりです。それに…玲菜ちゃんより…。」
「玲菜ちゃん?」
するすると言葉にできてしまう自分に驚く。走り出した言葉は止まってくれない。だめな自分なら、どこまでだって言える気がする。
「あんなに強く人を想える自分を想像できない、です…。」
圭介と出会ってまだたったの4か月。交わした言葉の数も質も玲菜に遠く及ばない。そんな自分が、圭介に好きだと言うには足りないものが多すぎる。それに、好きかどうかもわからない。
「…アプローチという点においては劣るかもしれないけど、気持ちは比較しようがないんじゃないのかなぁ。」
「…今、そうは思えません。」
「そういうところは強いなぁ、美海ちゃん。」
その時、部屋のチャイムが鳴った。
「あーなんでこういう時にうちにくるのよあのバカは!」
クレーム客が来た時のような表情になって、福島が玄関先に出ていく。取り残された美海は、グラスに残っていたチューハイを飲み干した。
「お客さんいるから無理。帰って。」
「冷たい!終電逃して帰れなくなったから泊まるとこがない彼氏に対して酷い!」
「酷いのはいい年して終電を逃すバカだバカ。」
「お客さんって女の子?」
「あ…あの…私なら帰りま…。」
美海はリビングから出てそう言った。彼氏が来たのならば、どう考えてもいなくなるべきは自分だと思う。
「うわー可愛い子!噂の新人ちゃん?」
「う、噂…!?」
「余計なことを言わずにとにかく帰れ、このバカ男!」
「お邪魔しまーす!初めまして、大倉って言います。咲絵(サキエ)の彼氏です。」
「…ほんと、帰って。」
「帰りますっ…!」
「美海ちゃんは帰らなくていいの!むしろ泊まっていって!帰るのはこいつ。」
そんな福島の言葉を完璧に無視して、大倉は部屋に入ってきた。