レオニスの泪
最初の頃に比べれば、ほとんどぐずることはしなくなった慧だが。




「おはようございます!おはよ~慧くん。」


「おはようございます…」





朝、保育所に預ける瞬間は、いつも浮かない顔をしている。


しかし、先生はそんなの気にすることなく、慧と手を繋ぐと。




「いってらっしゃい!」




私に、いってらっしゃいのエールを贈ってくれるのだ。




「......い、、、いってら...しゃい…」




その脇で、泣くのを必死に堪えて、笑おうとしている息子がかわいそうになる。





「いってきます、慧も一日頑張ってね!」





だけど、私も内奥の感情を仕舞いこみ、にこりと微笑んだ。






「!うん!」





簡単に無邪気に笑う慧に、ちくちくと心が痛む。



それでも。



笑顔になったから。




この笑顔と昨晩の寝顔だけで、私は十分に安心して、仕事場に行くことができる。
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