レオニスの泪
「今日は智也くんと沢山遊んだから、楽しかったでしょう。良かったね、慧くん。」
「うん!」
先生から言われて、私の脚に巻きついて居た慧は、顔を上げて大きな返事をした。
それから、私に視線を向けた先生は、小さく頷いて見せる。
ー智也くん、と…
その意味を理解した私は、ほっとする。
時間は掛かったけれど、慧は智也くんを許し、受け容れることができたのだ。そして、智也くんも、あんな態度をとった慧のことを許し、待ち続け、尚且つ受け止めてくれたのだろう。
「良かったね、慧。」
「うん!」
保育所でここまで機嫌の良い慧は、中々ない。
本当に気掛かりだったろうし、辛かったのだろうと思う。
子供の世界には、子供なりの苦労があるのだ。
それも、私が子供の頃よりも、もっと大変になっている気がする。
子供達は、やけに賢く、何かを悟ったような顔をし、大人び過ぎている。
「今日はねぇー、智也くんとねぇー、お絵描きしてねぇ、それから砂場で遊んだんだよ。」
自転車に乗った後も、慧はご機嫌で話続け、相当遊んだらしく、布団に入ったら即寝だった。