レオニスの泪
神成とは、病院ですれ違うことも、うっかり会うことも、全くといって良い程ない。
ーあぁ、考えるのやめた。よそよそ。ただの精神科の先生なだけだし、気にするの自体が馬鹿馬鹿しい。
寝返りを打って、右腕に頭をのせて、すやすや眠る慧の上、透明な空気をぼんやりと見つめた。
ーけど。
なんだか、つまらない気がする。
精神科の先生だから仕方のないことなのかもしれないが、私のことは根掘り葉掘り訊いて、よく把握されてしまっているのに。
自分は、神成のことを何も知らない。
神成は何も教えてくれていない。
患者相手だから、それはそうなのかもしれないが、なんとなく癪だった。
どこまでも優しそうに見える、童顔は。
見ようによっては、ひどく冷淡にも思える。
あのままの人なのかもしれないが。
神成は、何かを隠し持っているような気がしてならない。
そこにわざわざ踏み込むのはどうかと思うけれど、僅かに興味が湧いた。