レオニスの泪
「好きなもの…」
今度こそ、完璧に神成は困惑気味に呟いた。
「先生は何が嫌いで、何が好きなんですか?」
「あの、祈さん…」
「どうしたら笑って、どういう時に泣くんですか。」
「ちょっと待って…」
「どうやって恋をして、どうして結婚したんですか。」
「ストップ。」
制止されて、止まってしまう私は、やっぱり少しだけ真面目人間なのかもしれない。
畳み掛けるように、質問を投げかけただけなのに、どうしてか私は肩で息をしていた。
「どうしたの?」
いつも濡れているような大きな瞳が、揺れる。
診察室はあっという間に静けさに包まれる。
目と目だけが、神成と合わさって。
相手の心の中は、何も、見えない。
「…なんで先生は、先生になったんですか。いつも貼り付けた笑顔で疲れませんか。」
「祈さん。何かあったの?それならー」
「ー先生結婚してないんでしょ。どうして嘘の指輪してるんですか。」
神成に被せて核心に触れれば、彼は言葉を切った。