レオニスの泪
怒りのせいか、熱のせいか、それとも、悲しいのか。
それが森のせいか、神成のせいか、慧のせいか。
はたまた、職場関係なのか。
自分自身なのか。
わからないけれど、身体が小刻みに震える。
戦意の全くない相手に、ごり押しするかのように敵意に満ちた視線をぶつけた。
流れた沈黙。
ピン、と張り詰めた空気。
何を言っても、何をしても、ここに身を任せ、神成と顔を合わせて、時間の経過を待つ、なんて不毛だ。
そもそも、こんな薬品の匂いのする箱の中で、知らない人間と向かい合って、根掘り葉掘り訊かれ、改善される訳がない。
そんな簡単なことで、生活が楽になる訳がない。
けど、薬に頼りたくない自分。
だとしたら、病院に通う意味はないのではないか。
ー苛々する。
なんで、せっせと、こんな童顔男の所に通っていたのか。
「ー帰ります。」
「?!祈さん?」
止める神成に背を向けて、さっさと鞄を手に取った。
「もう来ません」
言うと同時に、カララとスライドドアを滑らせて、振り返ることなく出て行った。