レオニスの泪
歳は30そこそこといった所か。


細身で、背は170後半。


柑橘系の香りを纏い、切れ長の目は一見冷たそうだが、笑うと目尻に皺が出来て、一気に人懐こく見える。



「あの…さ。本当に風邪、辛そうだけど、大丈夫なの?」



入り口付近には人が多く出入りする為、邪魔になるからと、移動した先は、いつかの中庭だった。


「…さっきも言いましたけど、平気です…」


嘘。

大嘘。


本当は一刻も早く慧を迎えに行って、病院に行って、薬飲んで寝たい。


気力でなんとか成り立ってる、という感じ。

仕事中だから、気が張って平気かなと思う瞬間もあるが、終わればやはりどっと来る。




「無理しないでね…で、話なんだけど…」



中庭には、ほとんど人が居ない。


いや、ほとんどどころではない。


ひとりふたり、いる。

その程度だ。



そりゃそうだ、残暑厳しいこの季節。

夕方といえど、まだ陽射しがきつい。


ただでさえ、熱いのに、この暑さ。


寒気もしていて、変な感じだ。



仕事終わりに拷問か。

私はクーラーのかかる車ではなくて、自転車に乗って、帰らなければならないというのに。
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