レオニスの泪
でもその内、そういうの自体が、至極面倒に感じるようになった。
10代の頃の恋愛のように、ただ、相手が好きで好きで仕方なくて、将来が異様に大きく広がって見えることはない。
知ってしまった欠点ばかりが目に付いて、最終的にいつも辿り着く答えが。
―自分にはもう恋愛はできない。
包丁を動かしながら、冷めた感情になる。
いや、もうずっと前から、冷めてるんだけれど。
自分を綺麗にする、とか。
可愛く見せる、とか。
磨く、とか。
知ってもらうとか、知るとか。
誰かの為に、そうした努力することが、億劫だ。
慧の為に、生きている自分は、今自身を振り返る余裕がない。
―あの子が大きくなったら、考えるかもしれないけど。
軽く想像してみて。
いや、ないな、とやっぱり思った。
慧の為に生きる人生が終わってから、また誰かの為に生きるなんて、まっぴらだ。
誰かを支えなくちゃならないなんて。