レオニスの泪
「誰って…あらゆる男共…」
気づかない私は、ぶつぶつ返答しかけてから、はっとする。
あれ、この声は、と。
「酷いな、その中には間違いなく僕も入ってるよね。」
暑い気候に、ペパーミントの爽やかな香り。
ーし、んじょう…
最悪だ。
同じ病院に勤めてるから、偶然敷地内で出くわす可能性は心得ていた。
そうなった場合、どう対処するかも考えてあった。
だが。
今は、無理。
こないだみたいに弱っている。
こないだと同じ場所で。
歩くのもやっとやっとなのに、どうしようもない。
本当、タイミングが悪い。
けど、負けたくない。
結果、どうすればいいのか不明。
「ちょっと失礼。」
私の心の中の葛藤など、知らない神成は、着実に距離を縮め。
「うわ」
ひやりと冷たい掌が、私の額に置かれた。
「うーん、熱高いね。」
悲しいかな、その掌の温度の低さが、今の私を支えている。