レオニスの泪
昼になると、俄かに食堂は忙しくなる。
「A定食2つ下さい。」
「私日替わりで、サラダも付けて。」
「チキンカツ定食。セットのひじきの炒り煮少なめにしてもらえます?」
テーブルは、見舞い客と言うよりも、大体が患者ばかり。
意外に思うけれど、病院と言っても、患者は結構脂っこいものとかを平気で頼む。
厨房では、あちこちで注文が飛び交い、それぞれの担当が用意したものを、レジ係りがトレイに揃えて、渡し口から番号札を呼び、受け渡す。
そうして、戦場の様な昼が過ぎた頃。
「醤油ラーメン、半炒飯ちょうだい。」
―来たよ来たよ。ふざけた森野郎。
今一番見たくない男、森、登場。
反射的に、耳をぱたりと封じたくなる思いに駆られた。
「あらぁ、森さん。どーぉ?今度は看護師さん狙ってるんでしょ?」
噂大好き、お節介大好きな笹田が、持ち場を離れて、詮索を開始する。
「いやぁ、合コンとかしたんですけど、ぜーんぜん駄目でした!やっぱり働く女は強すぎて…」
―お前が弱すぎなんだっつーの。
ざるに入れた麺を湯でながら、一瞬タイマーを長く設定してしまおうかと邪念が生まれた。