レオニスの泪
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午前1:00過ぎ。


「うーん」

慧の穏やかな寝息をBGMに、居間で腕組みする私。

テーブルの上には、紙袋が置かれていて、珈琲の香りが部屋中に漂っている。


完全に抜けたとは言えないが、快方に向かっている私。

冷えた頭で考えれば考えるほど、自分の立場が悪いことに気付く。

例えば。


ーこの部屋に入られたのか。


とか。


ー職場がバレたのか。


とか。


ーあのまま話を流してしまったけれど、慧は一体どこまで知ってるんだろう、とか。


本来なら、記憶ごと抹消して、二度と会わないようにしたい。
できるなら職場も変えたい。



なのに、性分というのは、なんていうか。


このままではいけない、と私を突くのだ。



ーあと一回だけ、御礼だけして、それ以降は接触しないようにすればいい。


そう思い、何が良いか思案に思案を重ねたが、結局神成について知っている事は、彼が左利きで珈琲を飲む、ということしかなかった。


それで、高いから特別な時にだけ買いに行くお気に入りの豆屋で、珈琲豆を挽いて貰ったのだが。
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