レオニスの泪
「精神科医って、、一体何時に家に帰るんだろう…」



ここまできて、困っているのは、訪問時間だ。


大学病院に勤務しているのだから、日中は居ないだろう。

休みを家で過ごすのかわからないし、休みがどういうシステムになっているのかもわからない。


夜は、慧が寝付くまでは余り時間も取れない。

寝てからだって、そんなに家を空けることはできない。

だけど絶対に病院では会いたくない。

そして通院なんてしたくない。


もう、患者と医者の関係は終わりだ。

かといって、真夜中の訪問なんて非常識過ぎる。




「あぁ、駄目だ…煮詰まった。」



締め切り前の物書きみたいな台詞を呟き、居た堪れなくなった私は、鍵と財布と携帯を持って、勢いよく立ち上がった。



ちらっと慧を振り返れば、ぐっすり眠っている様子。


今夜は涙は出ていないけど。



ーちょっと夜風に当たってこよう。


時計を確認して、15分と心に決めた。


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