レオニスの泪

帰り際。



「あれ、葉山さん!こないだ出してって言っておいた来月のシフト、まだ出てないけど??」



チーフの金森が、更衣室で首を傾げて私を見つめる。




次々と帰る人たちが自分を追い越していく中、私はロッカーの扉を閉じた所で、固まった。




「あ…すみませんでした。今すぐ出します…」


「早くしてちょうだいね!皆のシフトまとめなくちゃならないんだから!」


「はい、申し訳ないです…」



頭を下げながら、私は心の中で『またか』と焦燥感にも似た思いがうごめくのを感じた。


来月のスケジュールを照らし合わせながら、シフト表に書き写している最中でも、ぐるぐるぐるとハテナが漂う。




―最近、、多い...



まだ仕事にはそこまで支障は出ていないが、物忘れが多くなってきている気がする。



記憶力には、自信がある。


神経衰弱だって、まだ慧に負けない。


でも―。


最近、寸前までやろうと思っていた事が何だったのか、思い出せない時がある。


最初の頃は、忙しいからだと思っていた。

やらなければならないことが沢山あり過ぎて、抜けてしまうのだ、と。



しかし、近頃は、ついこないだの記憶が、遥か遠い昔の事だったような錯覚に陥ったり、これから話そうとしていた会話の内容まで忘れてしまう。


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