レオニスの泪
ー頭、ちっちゃかったな。
「…うわ」
今もまだ手に残る感触を、改めて思い起こして、赤面とか。
幾つだよって自分に問いたくなるけれど。
やばいやばいと唱えつつも、深入りしたくなっている。
切ない胸の痛みの意味も知っている。
ー飢えてるのかな。
自身の中に発掘された、女の部分とか、要らないのに。
それにそういうのされたら、神成だって迷惑な筈だ。
だからこそ、スルーだった訳で。
だからこそ、理由も曖昧なものだった。
神成の事だ。
あの容姿であれば、患者が、間違って好意を抱くなんて事もざらにあるのではないか。
いや、確実にあるだろう。
ー私もその中の一人になんて、数えられたくない。
それに、愛だの恋だのなんて感情は、遥か彼方に捨ててきた筈だ。
こんな所で立ち止まるわけには行かない。
間違いなく増えていく想いを、正面から無視して、見ないフリしていつも通り歩いていく。
それが今の自分にはお似合いだ。