レオニスの泪


ー頭、ちっちゃかったな。



「…うわ」



今もまだ手に残る感触を、改めて思い起こして、赤面とか。


幾つだよって自分に問いたくなるけれど。


やばいやばいと唱えつつも、深入りしたくなっている。

切ない胸の痛みの意味も知っている。


ー飢えてるのかな。


自身の中に発掘された、女の部分とか、要らないのに。



それにそういうのされたら、神成だって迷惑な筈だ。


だからこそ、スルーだった訳で。

だからこそ、理由も曖昧なものだった。


神成の事だ。

あの容姿であれば、患者が、間違って好意を抱くなんて事もざらにあるのではないか。


いや、確実にあるだろう。


ー私もその中の一人になんて、数えられたくない。


それに、愛だの恋だのなんて感情は、遥か彼方に捨ててきた筈だ。


こんな所で立ち止まるわけには行かない。


間違いなく増えていく想いを、正面から無視して、見ないフリしていつも通り歩いていく。



それが今の自分にはお似合いだ。



< 179 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop