レオニスの泪
笹田は、私よりも古株で。
そのお喋り好きな性格は、周知の事実だ。
木戸だって、昨年度から来ているのだから、それを知らない筈はない。
ー理不尽なんですけど。
顔に出ないようにと思ったって、顔に出る。
口は笑っていても、目は笑えない。
「みーちゃった。木戸さんに何か話しかけられてたでしょう!」
全ての元凶が、わざとらしくカウンターにセルフサービスの食器を置きに来て、レジに立つ私に話しかけてくるから、尚の事。
「仕事の話です」
「なんだぁ、つまんないわねぇ!」
「………」
万年恋する女に、何を言っても解決はしない。
詳しく話しても、風を追うような虚しさが残るだけだ。
憂鬱に憂鬱が重なって、ミルフィーユのように、心の奥にのしかかってくるようだった。
食堂では、時間は飛ぶように過ぎていく。
休憩時間が近付くのを、掛け時計でたまに確認しては。
ーとっとと過ぎて帰る時間になってくれればいいのに。
時間が早送りされますように、と念じるだけ念じてみた。