レオニスの泪
「…5番、入ります。」
忙しい時間が終わり、私は声を掛けて、途中30分の休憩に入る。
まかない的な物も勿論あるのだが、大抵は家から小さな弁当を持ち込んで、休憩室で食べる。
但しここ最近は、食堂の外に出て、病院の展望ラウンジなる僅かなスペースで過ごすのが、個人的な定番となっていた。
この時間、私はひたすら頭を空っぽにしたい欲求に駆られる。
仕事も家事も、スピードが求められるから、わざと色んな動作をゆっくりしたくなる。
だから、昨日の夕飯と同じ味のおかずを口に放り込みつつ、ぼんやりと窓から見える景色に没頭する。
神成の言う、自分の為の時間は、こんな所で細(ささ)やかに取り分けられ、ほぼ成功していると言えよう。
ーなのに。
いつもならほっと一息吐くタイミングの筈が、どんよりとした気持ちに胃の奥が引き攣れる。
「…葉山です。」
白衣のボタンに手を掛け、帽子を外し、バックヤードのドアをノックすると直ぐ返事が戻ってきて、開ける前に一度溜め息を落としてからノブを回した。